コロナと不況が吹きすさぶ21年に生き残る術──希望なき未来には自ら希望を選び取るべし【クロサカタツヤ】
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コロナ禍でゴールデンタイムの番組のCMに変化
──ステイホームや巣ごもりで、人々の行動変化は個人消費をはじめ経済にも影響を与えました。この間、子どもと一緒に、久しぶりに地上波放送を見ていて驚いたのですが、現在のゴールデンタイムの番組にほとんどナショナルクライアントのCMが入っていないんですね。
クロサカ ナショナルクライアントと呼ばれる日本の大企業は、実は国内事業では大きな利益を上げていないんですよね。例えば、某化粧品大手企業の場合、中国の「独身の日」セールでの1日の売り上げが、日本の四半期売上と同じだという話を聞きました。だから中国でのビジネスを止められないし、むしろ国内事業を維持するために中国で稼がないといけない。そういう時代に、日本国内でのブランド力を維持するために、どこでリーチを獲得しているかというと、ラジオやウェブなんですよね。
──どうりでたまにラジオを聴くと、自動車とか家電のCMが多いんですね。
クロサカ もはやテレビは余裕のない疲れ切った人のメディアになりつつあるのかもしれない。情報メディアが変質したというのもありますが、そもそもテレビが相手にしていた「マス」が、疲れた人たちになってしまったんです。しかしその数が多くて、人口の6~7割。だからテレビもそれに合わせたコンテンツしか流さなくなる。疲れているんだから、おバカなコンテンツばかりになるわけです。よく「NHKしか見ない」って言っている人もいるけど、NHKも今やビデオリサーチから視聴率やデータを買ってきて、番組がどう見られているのかを民放と同じ目線で分析しているので、内容もたいして変わらない。
──テレビは今後どうなってしまうのでしょうか。
クロサカ この状態は非常に危険だと思っていて、今のテレビはお金を出して広告代理店や放送局の審査に通れば誰でも全国ネットでCMを流せる。最悪、怪しい宗教や欺瞞的なビジネスのCMばかりになりかねない。これもまた格差の結果なんですが、読者の皆様をはじめ余裕ある人たちはまだそういうCMを見て「これは詐欺だ」とわかるんです。でも、ステイホームできずに外で仕事をしなければならず、くたくたに疲れて帰ってきた後、アルコール度数の高い缶チューハイを飲んでフラフラになった状態をイメージしてみてください。そういう状態でCMを見ると、うっかり「いいかも」と思ってしまう。これはヤバイですよ。
──これまで毎年、「来年はヤバイ」と言ってきましたが、一方で希望もありました。今回は、希望がまったく見えないんですが……。
クロサカ 21年は、社会に希望はないです。大体、ウイルスとワクチンなんて、カルトの大好物じゃないですか。感染症は収まらない、ワクチンは効くんだか効かないんだかわからない。富裕層が東京・品川区のクリニックで中国製のワクチンを極秘投与、みたいなニュースがすでに流れていますけど、あれって一昔前は「新興宗教の壺」みたいなもんですよね。で、そういうバカみたいなカネの使い方ができる人は損するだけで済むわけですけど、壺を買えない若者達が精神的に蝕まれてしまう。
──一方でカネあまりによるバブル経済も、とんでもないレベルに到達しそうです。
クロサカ だから、個人が一人ひとりで希望を持って生きていかないといけません。希望を持つか、持たないかはあなた次第だけど、希望を持たなければ格差を乗り越える可能性もない。希望を持つ人に対しては、社会の側から手を差し伸べられるし、自ら声を上げることもできる。これからしばらく、社会は2対8に分かれてしまうでしょう。そのときに、どうやって、誰が、上のほうへ、2のほうへ行くのかは、正直なところわかりません。
──恵まれている人でも、突如ダメになってしまうこともあり得る。
クロサカ あると思います。振り返りの回では毎回、次の年を予想していますが、21年についてはシンプルです。とにかく景気がひどい状況で、格差が大きく広がります。日本の中でも東京とそれ以外とか、東京の中でもまた地域によって格差がある。また、業界の間で格差が生まれ、業界の中でもA社とB社とでは格差が生じる。わかりやすいのは通信業界で、菅総理の圧力で各社が新プランを発表しましたが、このまま行けばドコモの一人勝ちです。強制的に値下げさせられれば、シェアを持っていて体力があるところが勝つのは当然ですから。
──「ahamo」を見たら、普通はドコモを選びたくなります。
クロサカ 不況といっても、コロナによって生じるものと、それ以外の要因で生じるものがあって、最大の要因は今の政権です。菅総理は、小泉政権以上に既得権や既存の産業構造を壊そうとしていて、だから竹中平蔵氏とも仲がいい。それに比べると安倍さんは、思想信条は保守ですが、社会福祉の意味では大きな政府指向、むしろリベラルというか左側とさえいえた。菅さんは、それとは正反対で、コロナで経済が悪くなっているところに血の雨を降らせようとしかねない。来年の経済は数字で見えるもの以上に、ぶっ壊れ感がひどいことになるでしょう。
──すべて壊れた後に立ち直る術はありますか。
クロサカ 壊れた後は皆心が折れているから、リーダーが新しいものを作ろうと言っても誰もついてこない。そのためには、あらかじめ壊れる前に動いて、準備していないといけないんですよね。だから、壊れた後に新しく何かを作るためには、今、この時に準備しないといけない。
──とはいえ、ぶっ壊れ感の中で準備して作り始めるのは、茨の道のようにも思えます。
クロサカ 冷静に状況を見てみると、政策や経済はそっちに誘導しているんですよ。いま経営者は最小のリスクで借金できるようになっている。だから、経営者の勇気が試されているといえる。いろんなものが壊された後のために、お金を借りて新しいビジネスを作りにいける覚悟があるのか、と。
その一方で、これまでと同じやり方ではいけないんです。だって既存の産業構造やルールは壊されているから。それに私たちは、「デリーのヒマラヤ」や「北京の星空」を知ってしまった。あれが正解なのかはわかりませんが、過去にあった「ヒマラヤの見えないデリー」「星の見えない北京」とは違う選択肢があることを私たちは知っています。それなのに、また元通りの経済拡大を目指していいのか、今が分岐点ではないのか、あらゆる立場の人がその選択を迫られている。
──先ほどの2対8もそうですが、どうやって希望を持って、準備すればいいんでしょうか。
クロサカ こんな世の中で「希望を持て」というのは「騙されろ」と言っているのに等しいかもしれません。読者の皆さんも、クロサカは何を言っているんだ、と思うかもしれない。「オマエに責任が取れるのか」と言われても取ることはできないし、自分でも言いながら無責任だとすら思います。でも、あなたの人生だから、他の誰にも責任は取れないし、誰が言おうが言うまいが同じことで、将来に対して希望を持つか持たないかは、どこかで必ず突きつけられる話です。その結果、2対8に分かれるだけで、そこには家柄とか貯金とか仕事の有無とかは、実際は何も関係がないんですよ。
──確かに、お金を持っていても、不安なままの人もいますよね。
クロサカ 今の苦しさと不安に負けて止まってしまっては、その先にはたどり着けない。「苦しいけど大丈夫」と進めれば、たどり着ける。だから、「希望を持て」というのは、自分で自分を騙すということでもある。苦しい状況でも、目をつぶることなく、少しでも良い方を自ら主体的に選ぶ。
──「騙す」というと、それこそ宗教や詐欺的ビジネスを連想しますけど、苦しくてもそっちを選ばないための方便ですね。
クロサカ 例えば落語って、初心者がふらっと聞きに行って、いきなり楽しいとは限りません。落語家にも上手下手があるし、理解するには前提知識が必要なこともある。でも、適当に行って「つまんない」って帰ってきたら、まさしく時間もお金も取り返しがつかない。だったら、笑わせてもらうのではなく、自分から笑うべき。悔しかったら、なお笑うべきなんです。今日は笑う、どんな話でも笑う、あえて笑う、と覚悟を決めていく。それが自分を騙すと言うこと。
──それは、多様な価値観を認めつつ、その中で主体的に何を選ぶのか、ということだと理解しました。
クロサカ お笑いに限らず、スポーツとか、エンタメとかは人生に彩りを添えますが、ほとんどの人に取っては自分の人生や家族の命のほうが大切じゃないですか。所詮お笑い、所詮スポーツだけど、あえて選ぶのであって、だからこそ選んだなら楽しんだ者勝ちなんです。仕事だって同じです。でも、絶対化しちゃいけないし、それらよりも大切なことがある。わかりやすいのは子どもで、子どもができると、子どもの命が一番になる。ここに選択の余地はないですよね。自分にとって一番大事なものは何か。その上で、あえて自分で選ぶものは何か。
ところが、こんな問いを立てると、意識が高いって言われてしまうんですよ。そうすると、一部の人には話を聞いてもらえない。だから、意識は高くあるべきだけど、意識が高くない言い方をしなければいけないというパラドックス状態。ここをうまく語る言語を私たちはまだ持っていないんでしょうね。
──今のお話をすべて理解できたわけじゃないですが、もしかしたら文学なり哲学が果たしてきた役割なのかもしれません。
クロサカ 結論としては、どうにかなると自分で自分を騙しながら、死なないように生きていく。2021年はそれがすべてです。傷を負うかもしれないし、それによって寿命が縮むかもしれないけれど、死ななければ大丈夫。そしてもしかすると、ものすごいチャレンジができるかもしれない。そんなことを目指して、2021年も楽しく過ごしましょう。
クロサカタツヤ
1975年生まれ。株式会社 企(くわだて)代表取締役。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティングや政策立案のプロジェクトに従事。07年に独立、情報通信分野のコンサルティングを多く手掛ける。また16年より慶應義塾大学大学院特任准教授(ICT政策)を兼任。政府委員等を多数歴任。
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