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長瀬智也『俺の家の話』…自由を選んだ者は人に優しくなれるのか? “選ばれなかった側”の葛藤

『俺の家の話』公式サイト
『俺の家の話』公式サイトより

 長瀬智也主演の金曜ドラマ『俺の家の話』(TBS系)が話題となっている。2月12日に放送された第4話では、観山家の主・寿三郎(西田敏行)の芸養子だった寿限無(桐谷健太)が、実は寿三郎の実の息子であり、寿一(長瀬智也)たちと腹違いの兄弟であることが判明した。才能があるにもかかわらず、自分は血が繋がっていないからと寿一を立て続けてきた寿限無。そんな寿三郎が裏切られたようなかたちとなり、視聴者からは「寿三郎苦しい」「能が好きだからこそ辛いだろうな」と寿限無の心情を察する声が殺到した。

 一方で、寿三郎の孫・大州(道枝駿佑)と寿一のやりとりもまた視聴者の心を掴んでいた。

 高校生の大州は、観山家の長女で母の舞(江口のりこ)の言いつけで、幼い頃から能楽の稽古をさせられていた。しかし、自分より後に能を始めた寿一の息子・秀生(羽村仁成)が能楽の才能を発揮し、寿三郎を始めとする皆が秀生に注目するようになる。自分より年下で能楽歴も浅い秀生にいとも簡単に追い越されてしまい、大州は、逃げ道もしくは言い訳としてヒップホップダンスを始めるのであった。

 すると、大州の才能が開花。彼が所属するダンスユニットはコンテストで決勝まで勝ち残り、大州も能楽の稽古をサボってダンスにのめり込むようになる。しかし、舞は稽古をサボっている大州が気になって仕方ない。女性であることを理由に父の後継となれなかった舞は、その絶たれた夢を息子の大州に託していたのだ。大州もそんな母からのプレッシャーはひしひしと感じている。それでも、もう才能がない能からは逃げたいし、心から楽しめるダンスがしたいのだ。

 能の発表会が近づいても、大州は練習に顔を出さなかった。そんな様子を見かねた寿一は、路上でダンスを練習している大州のもとへ向かう。袴姿で迎えに来た寿一を見て、渋々能の稽古に戻ろうとする大州。すると、稽古には戻らず、大州をラーメン屋に連れて行ったのだった。ラーメンをすすりながら、大州の話を黙って聞く寿一。そして、「逃げるのも才能だってよ。俺は逃げた」と、かつて自分が寿限無に負けるのが悔しくて能から逃げたことを告白した。

 兄弟から「自由に生きている」と冷めた目で見られていた寿一だが、彼にもかつて計り知れない葛藤があったのだ。寿三郎の長男なのに、芸養子である寿限無のほうが能のセンスがあり、それを周りも知っているという辛さは思春期の10代には耐えがたいだろう。寿一はただ好き勝手に生きてきたのではない。才能面で“選ばれなかった人間”として誰よりも苦悩し、結果的にプロレスラーの道を選んだのだ。「自由」は一見楽そうに見えるが、誰のせいにもできない「責任」が伴う。そんな葛藤や苦悩を乗り越えたからこそ、こうして大州に温かい言葉をかけられるのかもしれない。

 『俺の家の話』は、何かと気付かされることが多いドラマだ。今後も登場人物たちの心情に注目していきたい。

■番組情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系/毎週金曜日22時~
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、桐谷健太、西田敏行、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村 仁成(ジャニーズJr.)ほか
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未、佐藤敦司
音楽:河野伸
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/oreie_tbs/

早乙女りこ(ライター)

東京生まれ神奈川育ちのフリーライター。映画・ドラマはジャンル問わず幅広く鑑賞しており、物語の展開を予想したり、役者の演技を複数作品で見比べたりすることが趣味。

さおとめりこ

最終更新:2021/02/19 15:30
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