ワクチンがつくる「コロナ後の世界」と加速するシリコンバレー離れ
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シリコンバレー脱出のムーブメント
21年、テクノロジーの世界はどう変わるのか。私が住んでいるシリコンバレーでは、多くの企業が、この土地から離れようという動きが加速している。
「カリフォルニアは、あまりにも長きにわたって、勝ちすぎた」
そうツイートしたのは、今やトヨタをはるかにしのぐ時価総額をほこるようになった、電気自動車メーカーのテスラなどを経営するイーロン・マスク氏だ。
その意味するところは、あまりにも成功した巨大テック企業の城下町になったこのエリアでは、コロナ後の新しいイノベーションを生み出せないだろう、という皮肉が込められている。
実際にイーロン・マスク氏は、長らく親しんだシリコンバレーを離れて、テスラの2番目の工場が建設されているテキサスに移住している。
またヒューレット・パッカードや、オラクルといった伝統的なシリコンバレーの大企業も、この地から離れることを公式に発表している。
グーグル、アップル、フェイスブック、そしてウーバーやエアー=ビーアンドビーまで。これまで世界を席巻してきたシリコンバレーは、このパンデミックにあって、いよいよその問題点が浮き彫りになっているのだ。
彼らは巨万の富を稼ぎ出し、この地のバブルを引っ張ってきた。そして世の中は確かに便利になった。一方で医療、教育、住居といった社会問題や、生きる上での不平等はむしろおし広げたのではないかと、疑いの眼差しを強く向けられている。
彼らのお膝元はロックダウン状態が続き、お金がない人たちが「ギグワーカー」として、ウーバーの運転手や、インスタカートといった買い物代行アプリの手足となって、深夜まで働いている。
ソフトウェア産業で働いている人々は、一瞬でオフィスから姿を消して、広々とした自宅や別荘で働くことができる。しかし、地元のレストランや商店では、老舗もふくめて閉店ラッシュが続いている。
そんなディストピア的な光景を目の当たりにした次世代の起業家らは、果たしてシリコンバレーを目指すのか、疑わしいと言わざるを得ない。
21年は、これまでのシリコンバレーが救えなかった大きな社会問題を、誰が解決するのかが大きな命題になるはずだ。
後藤直義(ごとう・なおよし)
1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。
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