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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.623

人生最期の日々は、自宅で穏やかに過ごしたい? 柄本佑主演の終末医療ドラマ『痛くない死に方』

観客と同じ目線に立つ俳優・柄本佑

長尾和宏医師をモデルにした長野医師(奥田瑛二)。カルテより患者に向き合う大切さを説く。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)治療の第一人者として活躍した実在の医師・安克昌、その生涯を柄本佑が演じた『心の傷を癒すということ 劇場版』も見逃せない。精神科医の安が阪神淡路大震災で被災した人たちの心のケアに奔走する姿が描かれている。

 安の妻・終子を演じているのは、『素敵なダイナマイトスキャンダル』でも共演した尾野真千子。ふたりが出逢うエピソードがユニークだ。名画座に出掛けた安は小津安二郎監督の名作『東京物語』(53)を観るが、上映終了後に隣にいた女性から声を掛けられる。原節子のセリフが聞き取れなかったので教えてほしいと。その女性が終子だった。ふたりは原節子が口にしたセリフが気になって仕方ない。原節子がきっかけで、その後ふたりは交際を始めることになる。ピンク映画だけでなく、シネフィルでもある柄本佑にとっては、こちらも演じがいのある作品だったろう。

 柄本佑はイケメンではないが、観客と同じ目線に立った気取りのない演技をいつも見せてくれる。柄本佑が見せる普段着っぽい演技のことを「嘘のない芝居」と呼ぶのだろう。そんな彼が演じる医者なら、信頼してもいいんじゃないかと思えてくる。神業を持った天才医師ではないが、患者やその家族に寄り添い、一緒に悩み、最適な治療方法を考えてくれそうだ。そんな実直さが、俳優・柄本佑の魅力にもなっている。

 TVや映画に引っ張りだこの柄本佑は、今は芝居をするのが楽しくて仕方ない時期なのだと思う。役者としての伸び代も、まだまだありそうだ。『痛くない死に方』では尊厳死、『心の傷を癒すということ』では震災後のPTSDと、どちらも重いテーマを扱っているものの、柄本佑が主人公を演じることでカラッとしたドラマに仕上がっている。この2作、医療ドラマとしても、俳優・柄本佑の成長ぶりを感じさせる作品としても、かなり見応えがある。

 

『痛くない死に方』
原作・医療監修/長尾和宏 監督・脚本/高橋伴明
出演/柄本佑、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二
配給/渋谷プロダクション 2月20日(土)よりシネスイッチ銀座、3月5日(金)よりテアトル梅田ほか全国順次公開
(c)「痛くない死に方」製作委員会
https://itakunaishinikata.com

※柄本佑がナレーターを務めたドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も全国順次公開中
https://itakunaishinikata.com/kettainamachiisha/

『心の傷を癒すということ 劇場版』
原案/安克昌 脚本/桑原亮子 演出/安達もじり、松岡一史、中泉慧
出演/柄本佑、尾野真千子、濱田岳、森山直太朗、浅香航大、清水くるみ、上川周作、濵田マリ、谷村美月、キムラ緑子、石橋凌、近藤正臣
配給/ギャガ 全国順次公開中
https://gaga.ne.jp/kokoro/

最終更新:2021/02/19 15:00
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