二階氏が“日本のラスボス”!? ベトナム共産党人事に絡む複雑な事情
#自民党 #ベトナム #共産党
党内の対立路線:綱紀粛正vs自由化主義
2011年1月に党書記長の座についてからチョン氏は「党建設」の名のもとに綱紀粛正、反汚職闘争を推し進める強力なリーダーシップを発揮してきた。
翌12年には、それまで政府のもとに置かれていた中央汚職防止指導委員会を党政治局直属の機関にした。再任された16年以降は公安部門出身者を党、政府の要職に就け、自身も公安部門を司る中央公安党委員会の常務委員を務めた。体制維持を何よりも優先する公安部門は時に任務遂行の為には人権侵害も厭わなかったとされる。
しかし、一切の汚職を許さないチョン氏の清廉な人柄と、前例のない3期目の書記長の座を勝ち取った政治手腕は党内の他の政治主導者からは恐れられると同時に、ある種の尊敬も集めてきた。
一方のフック氏は、「ベトナムは2045年までに高所得国の仲間入り目指す」と発言するなど、より積極的な経済自由化路線を目指したが、やはりチョン氏の敵ではなかったようだ。5年前の16年の党大会に続き、今回も書記長の座を逃した。
両者ともラスボス二階氏との2ショット、自らの正統性を誇示か?
ベトナムも中国同様、国を治める党の書記長の方が首相より偉い。共産党支配下の国では、首相率いる行政機関は党の下部組織の位置づけだ。党の幹事長が総理総裁より下である日本の政権与党・自民党とは最初から事情が違う。
日越友好議員連盟会長を務める二階俊博自民党幹事長は、幹事長に就任した翌月の2016年9月にハノイを訪問し、グエン・フー・チョン書記長およびグエン・スアン・フック首相とそれぞれ会談している。
その後、二階氏は20年1月に、国会議員や旅行業関係者ら約1000人を引き連れ、ベトナム中部の観光地ダナンやホイアンを訪れている。全国旅行業協会(ANTA)会長の顔も持つ、二階氏肝いりのこのベトナム訪問には、観光庁の田端浩長官、日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長、日本観光振興協会の久保成人理事長、日本政府観光局(JNTO)の清野智理事長らも同行した。また、アジアのハーバード大学を目指すと2014年7月にハノイに設立され、16年9月に開学した日越大学も二階氏の肝いりだ。
ベトナムにおける二階氏の存在感は大きい。
そして、自民党の幹事長職とベトナム共産党の書記長職が同一視されているためもあって、少なからずのベトナム人が二階氏を日本のナンバー1と見ている。こうした“誤解”を日本への留学経験もあるベトナム人IT技術者、男性(30歳)は「二階さんの方が安倍さんや菅さんより年齢が上で、おじいちゃんに見える。ベトナム人は年長者を敬うので皆、二階さんを日本のトップと見ている」と解説する。
チョン書記長と、今度、国家主席となるフック首相の双方が、二階氏との2ショットに収まっている。たとえ、これがベトナム国内向けのためであっても、自らの箔付け、正統性を示すために撮影したものであるとすれば、ある意味、苦笑してしまう。
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