松浦亜弥やモー娘。に人生を救われた人々がいた! 松坂桃李主演の実録コメディ映画『あの頃。』
#松浦亜弥 #松坂桃李 #モー娘。
オタクにすらなれない人間は、動物化するしかない。アニメ界の巨匠・押井守監督を2016年にインタビューした際の言葉だ。オタクであるためには、ある程度の財力とエネルギーを必要とする。オタクであることは最後の砦であり、オタクにすらなれない人間は犯罪に走りかねないと押井監督は語った。松坂桃李が主演した、今泉力哉監督作『あの頃。』は、アイドルオタクを主人公にした映画だ。アイドルオタクという自分の居場所を見つけることで、主人公たちが人生のどん底状態から救われる超ポジティブな実録コメディとなっている。
物語は2004年の大阪から始まる。フリーターの劔(松坂桃李)はバンド活動がうまくいかず、しんどい毎日を過ごしていた。生きることが、まったく楽しくない。暗い顔をした劔のことを心配した大学時代の友人が、松浦亜弥のビデオを渡す。「桃色片想い」を歌うあややは、キラキラと輝いていた。全力で生きている人間だけが放つ輝きだった。塞ぎ込んでいた劔は恥ずかしくなる。気づいたときには、号泣していた。あややのファンになることで、劔の人生は大きく変わっていく。
松浦亜弥が所属する「ハロー!プロジェクト」のマニアたちが集まる関西のトークライブに、劔も参加するようになる。ライブの常連メンバーは、指名手配中の連続強盗犯によく似ているイトウ(コカドケンタロウ)、痛車に乗っている西野(若葉竜也)、ケチでネット弁慶のコズミン(仲野太賀)といった個性的な独身男性ばかりだった。みんな30歳前後なのに、彼女はいない。トークライブの後は、打ち上げと称してのイトウが暮らすマンションに集まっての宴会。ハロプロのビデオを見ながら、それぞれが好きなアイドルを熱く語り合う。むさ苦しい顔ぶれだったが、社会に自分の居場所を見つけることができずにいた劔には、とても心地よく感じられた。
大学の学園祭でアイドル文化について語るイベントを開くが、オタクならではの異様な盛り上がりは普通の女子大生たちからは気持ち悪がられる。AV女優との握手会で、大はしゃぎする。「中学10年生の夏休み」みたいな日々を、劔たちは謳歌する。掛け替えのない仲間たちとの出会いだった。「今が人生でいちばん楽しい」。劔は生きることを肯定できるようになっていた。
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