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「大麻の茎や種から抽出」と謳うが…美容&健康業界で盛り上がる大麻成分CBDのグレーゾーン

──最近、CBDという単語を目にした読者がいるかもしれない。大麻に含まれる成分であるが、ハイになるものではなく、それを配合したオイルやクリームが街中のコスメショップで売られ、オーガニック/ウェルネス志向の女性にウケている。ただ、大麻由来ということもあり、法的に問題はないのか? CBDブームの実情に迫る!。(「月刊サイゾー」12月号より一部転載)

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吉川ひなの監修のフレグランス「tiare ala MEDICARE」はCBD配合とのことだが、このCBDは大麻のどの部分から抽出したのか――。ホームページより。

 10月某日、訪れたのは東京・渋谷スクランブルスクエア内にある「Biople by CosmeKitchen(ビープル バイ コスメキッチン)」のポップアップストア。オーガニックなものやウェルネス(健康)に関心が高い女性を中心に、「海外セレブも愛用している」として人気のCBD(カンナビジオール)関連商品が、およそ30アイテム並ぶ。店員におすすめの商品を聞くと、「H THINK」というブランドがよく売れているという。中でも、ユズ味のCBDオイル「CBDアイソレートティンクチャー ユズ 30㎖」(税込7370円)はビープル限定商品としてイチオシらしい。

 CBDオイルは舌下に直接垂らしたり、食べ物や飲み物に垂らしたりして摂取するもの。店員にその効果を尋ねたところ、こう話した。

「オイルに含まれるCBDの濃度はさまざまで、寝つきが悪い方は高濃度、緊張感やイライラ、不安感がある方は低濃度から始めることが多いですね。小さなお子さんも摂取できて、寝つきがよくなった、ぐずりがなくなったという話を聞いています。とにかくCBD商品は今すごく人気で、美容誌、ファッション誌、アスリート誌などでよく取り上げられているので、女性だけでなく男性のお客様も多いですね」

 H THINKの商品には「MADE IN JAPAN」と書かれ、店頭のポップには「有機栽培されたヘンプの茎だけから抽出」とある。店員が続ける。

「すべての商品、“検査”を通ったものなので、安心してお使いいただけます。特に『アイソレート』と表示があるものは、CBDの効果のみ抽出したもの。“検査”しても絶対に引っかかりません」

 ショップを出た後、H THINKの公式サイトを見てみると、「米国で有機栽培されたヘンプの茎からのみCBDを抽出」「日本のルールに順守した高品質な米国の原料を使用し、安心安全な日本国内で製品化」(ママ)と書かれていた。ちなみに「ヘンプ」とは、いわゆる“ハイ”になるTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分の含有量が極めて少ない産業用大麻を意味する。

米国から始まったCBDブームの背景

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渋谷スクランブルスクエア内にあるポップアップストア「Biople by CosmeKitchen」の店員に薦められたCBDオイルたち。左よりエリクシノールの「トリップライン1200」(税込1万780円)、H THINKの「CBDアイソレートティンクチャー ユズ 30mL」(税込7370円)。なかなか気軽には買いづらい価格だが……。(写真/Ikki Fukuda)

 CBDとは大麻に含まれる成分のことだが、日本においてCBD製品は“合法”だ。特に大麻のバッズ(花穂)にはCBもTHCも多く含まれ、後者は麻薬及び向精神薬取締法で麻薬に指定されているが、向精神作用がない前者自体は同法の範疇ではない。また、大麻(大麻草の成熟した茎や種子、あるいはそれらの製品は除く)の栽培、所持、譲受・譲渡などは大麻取締法により禁止されている。したがって、茎や種子を原材料とするCBD製品であれば、輸入や販売は可能というわけである。

 国内で流通している主なCBD製品としては、前述した舌下に垂らすオイルのほか、肌に塗るクリームやロールオンタイプ、カプセルやタブレット、キャンディーやグミといった食品などがある。あるいは、CBDを濃縮したリキッドやワックス、パウダーをヴェポライザー(電子たばこ)で気化して吸う方法もある。経口による生体利用効率が15%程度といわれているが、肺からの摂取の場合はその3~4倍摂取できるとされている。しかも、経口のオイルは高濃度のものでもCBD含有率30%程度だが、ワックスは100%という超高濃度のタイプも販売されている。

 そんなCBDの先進国はアメリカだが、そこでもまだ新しい市場だ。CBDが大きな注目を浴びるようになったきっかけのひとつが、2013年にCNNで放送されたドキュメンタリー番組『WEED』。強力な薬でも発作が治らない難治性てんかんを患う少女・シャーロットが、大麻草からつくられたCBDオイルを摂取したところ、発作回数が激減していく様子が映し出されたのである。

 また、アメリカでは2010年代後半から処方薬であるオピオイド系鎮痛薬の依存症や乱用が社会問題化。オピオイドとは、ケシから生成された成分やそこから合成される鎮痛薬などの総称で、1日平均150人以上が合成オピオイドの過剰摂取で死亡。17年10月にはトランプ大統領が“オピオイド・クライシス”を公衆衛生上の非常事態と宣言した(こちらの記事参照)。

 こうした背景から依存性の低い医療用/嗜好用大麻の合法化が進み、“グリーン・ラッシュ”と呼ばれる大麻ビジネスの拡大が起きた。その中ではTHC含有の製品も流通しているが、CBD製品に関しては薬品、化粧品、ペット用品など、さまざまな分野で登場。コーヒー、ハンバーガー、お菓子といった食品へのCBD添加も大流行したが、重金属、残留農薬の問題を含めCBDの安全性への懸念から、アメリカ食品医薬品局(FDA)が18年12月、飲食物へのCBD添加を違法と発表するほどに。ニューヨーク市も、CBDが含まれる飲食物の提供や販売を19年7月から禁じている。ともあれ、アメリカでのCBD市場は2025年までに現在の数倍、いや数十倍にも拡大すると期待されている。

 その波が日本にも訪れつつあり、ここ数年で輸入品だけでなく、日本のオリジナルブランドのCBD製品がオーガニック化粧品を扱うショップなどに並ぶようになった。モデルの吉川ひなのも、19年からCBDオイルを配合したフレグランス「tiare ala MEDICARE(ティアレアーラ メディケア)」を監修している。

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