コロナ災禍の中で船出した日本の5G、普及の鍵は? 期待外れの評価を覆せるのはいつか【クロサカタツヤ×石川温】
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5Gが叶える「場所からの開放」
クロサカ ウェブ会議とビデオオンデマンドで、トラフィックが上りも下りも激しくなってきて、5Gにとっては追い風が吹き始めました。ただ、一般的なユーザーの視点からすると、ブロードバンドが欲しいという人と、5Gの特長が結び付いていない。つまり、ブロードバンドは自宅の固定回線のことで、モバイルじゃないという思い込みがある。そこへ、降って湧いたこのビデオトラフィックの増加に対して、5Gはどんなふうに貢献してくれるとお考えですか。
石川 皆が、巣ごもりのためにストレスを感じているので、家の中でやっていたことを、外でもデータ容量と場所を気にせずにできる開放感が改めて評価されてくる。例えば、学生ならカフェや図書館でWi-Fiにつないで勉強をするというスタイルだったのが、現状はカフェも閉まって、この先も同じスタイルではできない。それが、5Gによってどこでも勉強ができるという、場所からの開放が鍵になってくると思います。
クロサカ 今後、非常事態宣言が解除されても、当面は3密を避ける必要があり、今までと同じような生活や仕事のスタイルには戻れません。これからは遠隔授業やテレカンのためにネットがつながらないと勉強も仕事もできなくなるし、Wi-Fiが入っていてもトラフィックが重くなる場所ではNGです。となると、自由な場所で仕事や勉強をするためには、5Gの必要性が高い。ところが、残念なスタートでした。
石川 通信会社自身もメディアも5Gをあおってきた面があり、そこは反省すべきところだと思います。通信会社だって本心では、5Gは金がかかるし、周波数帯も使いにくいし、5G対応のiPhoneが出るまでは手抜きでいいかな、と思っていた節は否めないでしょう。
クロサカ 特に日本は、世界的に見ても4Gネットワークの完成度が高いし、料金もそれほど高いわけじゃない。そう考えると5G普及の最大の敵は4Gになる。ただ、同じ事業者のサービスである以上、敵と言ってもしょうがないわけで、それぞれの通信事業者が自ら克服しないといけない課題です。
石川 iPhoneが5Gに対応すると3社の比較軸ができてしまうので、おそらくそこがスタートになるでしょう。4Gの時も、iPhoneを買ったユーザーがキャリアごとの通信速度をSNSで共有して、評判が出来上がっていきました。5Gでも、各社ともそれを見据えて、加速させると思います。
クロサカ iPhoneが通信技術普及のトリガーになるというのは、日本をはじめとしたiOSシェアが高い国々の現象です。おそらく次のiPhoneは5Gに対応しますが、かなり価格が高くなるでしょう。iPhone 11の実勢価格や、先行するAndroid機種の5G対応状況から考えると、次のiPhoneのハイスペックモデルは20万円近くなるかもしれない。そうなると、端末価格と通信料金の完全分離規制をしてしまった後では、消費者に対して最新のiPhoneに20万円払ってください、というのはかなり厳しい。
石川 規制のために端末価格の割り引きできないことと、アップルがiPhone SEをかなり安く発売してしまったことは、5G普及の足枷になるでしょう。アップル自身も、5G対応iPhoneがかなり高価になるとわかっているので、SEは安くしたんだと思います。特に日本にとって厄介な点は、ファーウェイを排除してしまったことです。これからファーウェイから安価な5G対応スマホが出てきますが日本の通信事業者は自社ブランドで売ることができない。そうなると、安いスマホで5Gを普及させるというシナリオが、日本では実行できない。
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