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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 紆余曲折のラッパーLety

『フリースタイルティーチャー』ブラジルにルーツを持つ紆余曲折のラッパーLety。ディスだけじゃないバトルをさせてあげたい

‘HIP HOPに寄せずアイドルの世界観で闘い抜いた恋汐’

 第2試合はyukarin VS 恋汐。現時点で2戦全勝のyukarinはさすがに安定感がある。スキルを細かく見ていくと、恋汐の口癖「~まる」を指摘した「まるまるはもう そう懲り懲り」のライムは芦田愛菜と鈴木福のヒット曲『マル・マル・モリ・モリ!』と掛かっている。そして、彼女の上手さが最も表れたのは以下のライムだ。

yukarin 「でも しかと見ときな格の違い 勝つも負けるも覚悟次第
      誰より気合入ってんだわ 私 見えんだ 自分が勝つ未来」

「しかと見ときな格の違い」はhy4_4yhの師匠筋にあたるRHYMESTERの曲『Come On!!!!!!!!』からのサンプリングであり、同時に「格の違い」「覚悟次第」「勝つ未来」で踏んでいる。韻とメッセージ性、どちらも強い。総合力はyukarinが抜きん出ているか?

 対する恋汐は前回のrisanoと同様にKダブシャイン『ラストエンペラー』のパンチライン「自分が自分である事を誇る」をサンプリングした。彼女のラッパーとしての個性を表すとしたら、確かにこのライムが最も適格だ。まさに、アイドルはそういう職業なのだから。

恋汐 「でも汐のキャリアもそれなりにロング
    この黒髪ロングも アイドルになった時から ずっと続けてきてる
    汐の長所であり象徴みたいなものって事 今日は強調しとく」
    
 まず、「長所」「象徴」「強調」で踏む韻の固さを評価したい。加えて、アイドルとして積み重ねてきたものがそのまま強い武器になっているのもいい。恋汐はアイドルのまま、自分のままで総当たり戦を闘い抜いた。最初に彼女が宣言した「汐りんらしく、汐がやらない事はやらず、やれるラップをやる」の言葉通りである。そんな恋汐の考えは以下のラップに表れている。

恋汐 「誰もが思ってると思う 汐が1番HIP HOPから遠い存在
    そう アイドルとしては 極めてきたけどって思ってる
    だけど汐は お待たせしましたダークホース
    意外とラップ上手なとこもあるなのし
    今日はyukarinに勝ってガッツポーズ」

 HIP HOPから最も遠い恋汐はあえて自分をHIP HOPに寄せず、アイドルを極めた己の世界観で勝負した。これぞ、自分が自分である事を誇る。同時に、「ダークホース」「ラップ上手」「ガッツポーズ」とauouで踏んでいるのも見事だ。

 初めて恋汐を見たとき、彼女のことを誤解していた。異端の存在としていびつなインパクトだけ残し、あとはにぎやかしの白星配給係で終わると思っていたのだ。にぎやかしどころか、最も芯のある出場者は恋汐だった。加えて、スチューデントの個性を伸ばすTKティーチャーの手腕にも注目したい。Kダブが「自己主張や『自分が誰か』を伝えるべきと教えていた」と評価した通り、TKがいたからこそ恋汐は自身の世界観で勝負できたと思う。このバトルは2-1でyukarinが勝利した。これで恋汐は全バトルを終了、彼女の最終戦績は1勝3敗だ。

 予告によると、遂に次回はyukarin VS risanoが放送される模様。筆者はこれが事実上の決勝戦だと思っている。「よく見ろ お前よりやっぱ可愛い 怒ってても可愛いわ」とyukarinが言い放つシーンだけでもう面白い。もし、仮にこのバトルでrisanoが勝利し、成瀬瑛美(でんぱ組.inc)がLetyに勝ったとしたら、yukarin、risano、成瀬の3人は3勝1敗で並ぶことになる。今回の総当たり戦は混戦だ。

 1つ気になることがある。Kダブが講師を務める「ミッドナイトHIPHOPアカデミー」が今回取り上げたのはエミネムだった。時代の進み方がちょっと速い気がする。今クールまでに何とかHIP HOPの歴史を収め、そのまま番組を終了させるつもり? いつ終了しても不思議じゃない危うさが『ティーチャー』からは絶えず感じられ、おっかなびっくりになってしまう。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/01/26 20:54
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