クローネンバーグ監督が描く変態夫婦の純愛物語! 交通事故に興奮する危険な映画『クラッシュ 4K』
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エロスとタナトスが交差する瞬間、人間はかつてない最高度のエクスタシーを感じる。1996年に劇場公開されたデヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『クラッシュ』(原題『Crash』)は、交通事故に遭うことに興奮を覚える人々の悲喜劇を描いた作品だ。英国では上映禁止騒ぎが起き、日本では成人映画に指定されるなど、世界各国でセンセーショナルな話題を呼んだクローネンバーグ監督屈指の問題作が、『クラッシュ 4K 無修正版』としてリバイバル上映されることになった。
カナダ出身のクローネンバーグ監督は、人間が変質・変容していく様子をクールなカメラワークで捉える特異な映画作家だ。ブレイク作『スキャナーズ』(81)では人間の頭部が破裂する瞬間を描き、マニアを狂喜させた。『ヴィデオドローム』(82)の主人公は殺人が繰り返されるスナッフビデオに魅了され、ビデオの世界と一体化してしまう。その後も、テクノロジーや環境の変化によって、人間の内面が変化し、やがては人間そのものが別人、いや別の生き物に変わっていく過程をカメラで追いかけ続けている。
英国の人気作家J・G・バラードによる同名小説を原作にした『クラッシュ』は、倦怠期を迎えた夫婦の物語だ。CMプロデューサーのジェームズ・バラード(ジェームズ・スペイダー)は妻・キャサリン(デボラ・カーラ・アンガー)のことを愛しているが、最近は妻の体では最後までイクことができずにいた。愛情と性的欲望は必ずしも一致しない。そこでジェームズもキャサリンも、自宅外で他の相手との不倫にいそしみ、そのことを報告しあうことで刺激を取り戻そうとしていた。
そんなとき、車を運転していたジェームズは、命に関わる大事故を起こしてしまう。正面衝突した対向車の男性ドライバーは、フロントガラスから飛び出して即死。その助手席に座っていた人妻・ヘレン(ホリー・ハンター)とジェームズは目が合い、その瞬間に言いようのない快感の予兆を感じてしまうのだった。
重傷を負いながらも病院を退院したジェームズは、事故車を処分するために事故車置き場へと向かう。事故で歪んだ車は、とてもエロチックだった。そこには夫を亡くしたヘレンも佇んでいた。ヘレンの夫を死なせてしまったことへの罪悪感、死線から生還を果たした喜び、そして事故に遭った瞬間の忘れがたい衝撃がないまぜとなり、ジェームズはヘレンとのカーセックスに禁断のエクスタシーを覚える。ヘレンとの出会いは、果てしなく続く快感地獄の始まりだった。
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