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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 東方神起・ユンホ“19禁MV”の凄味
VODで観たい映画レビュー「劇場と配信のあいだ」

東方神起・ユンホが韓国の名優ファン・ジョンミンと挑んだ“19禁MV”のスゴみ【劇場と配信のあいだ番外編】

────劇場か、配信か。映画の公開形態はこのどちらかに偏りつつあるが、その中間が存在していることを忘れてはならない。YouTubeやVODで観られる劇場未公開の傑作を加藤よしきが熱烈レビュー!

東方神起・ユンホが韓国の名優ファン・ジョンミンと挑んだ19禁MVのスゴみ【劇場と配信のあいだ番外編】の画像1
YouTube「U-KNOW 유노윤호 ‘Thank U’ MV」より

 今回ご紹介したいのは東方神起のリーダー、ユンホ(U-Know)のソロ曲のMVである。東方神起といえば2005年に日本デビュー、第一次K-POPブームを引っ張り今なお安定の人気を誇るグループである。そんなユンホが、このたび34歳にしてソロアルバム『NOIR』をリリースすることになり、リードシングル「Thank U」を発表したのだが……このMVを是非とも紹介したい。

 もはや映画ではないが、とにかく見てほしい。この興奮はテイラー・スウィフトfeat.ケンドリック・ラマーの「Bad Blood」のMVを見たとき以来だ。ド直球で作り手の「やったるで!」という“好き”の気概をブツけてくるMVである。

 冒頭から雨にふられながら煙草を吸う異常にカッコいい人(=ユンホ)! キャンディを舐める極悪ヤクザ! 包丁でサクサク刺されるユンホ! 刺す! 刺す! 韓国ヴァイオレンス映画では包丁で刺されるの一種の定番だが、それにしたって執拗に刺す! ユンホは大流血して死んだ……と思ったら、根性で復活! 病院搬送後もアクション映画の文法に則り速攻で自主退院! かと思ったら刺客が襲ってきて格闘アクション! 脱出後は特訓と激闘! そして最期は命を賭けたロシアン・ルーレットへ……! 

東方神起・ユンホが韓国の名優ファン・ジョンミンと挑んだ19禁MVのスゴみ【劇場と配信のあいだ番外編】の画像2
『Mishima』を思わせるワンシーン(「U-KNOW 유노윤호 ‘Thank U’ MV」より)

 恐らく皆が見たいもの全部盛り、いやそれ以上だったのではないだろうか。過去の名作映画からの引用も多く(この点も「Bad Blood」味がある)、『Mishima』(1985年)、『キル・ビル』(2003年)、『オールド・ボーイ』(2003年)、『新しき世界』(2013)年、『ジョン・ウィック』(2014年)……数々の名作・傑作から、カッコいいビジュアルをピックアップしている。

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ファン・ジョンミン主演で大ヒットした映画『国際市場で逢いましょう』(15年)にユンホがカメオ出演した縁もあり、今回ユンホのMVにノーギャラ出演を快諾したとか。粋である。(U-KNOW 유노윤호 ‘Thank U’ MV Teaserより)

 悪役として韓国の人気俳優ファン・ジョンミンが出ている点も見逃せない。傑作韓国ノワール『新しき世界』を代表作に持つ俳優だが、以前韓国の方に「僕、韓国のヤクザ映画が好きなんですよ」と話を向けたら、「だったら『新しき世界』の話をしましょう! ファン・ジョンミンが最高じゃないですか!?」と即答されたことがある。ファン・ジョンミンはまさにそのレベルにいる人物なのだ。いわば韓国ノワールの「顔」である。日本でいうと、ヤクザ役で役所広司や哀川翔が出てくるような豪華さだろうか。

東方神起・ユンホが韓国の名優ファン・ジョンミンと挑んだ19禁MVのスゴみ【劇場と配信のあいだ番外編】の画像4

 そして当然ながらユンホ本人もメチャクチャにカッコいい。喫煙シーンに始まり、雨に塗られるシーンの色気には息を飲むし、エレベーターの中でのパワフルな格闘シーンは絶品だ。言い逃れできないレベルで『新しき世界』だが、エレベーターのタイマンという画のせいか、結果的に『タイガー・キッド 旅立ちの鉄拳』(2009年)っぽくなっているのも嬉しい(もしくは最初から『タイガー・キッド』の可能性もあるが)。もちろんユンホの代名詞であるキレキレのダンス、すべてが完璧である。

 さらに感動したのが、このMVには暴力表現のため年齢制限がかかっていることだ。近年、MVの重要性が増している。YouTubeやTikTokでMVが拡散して、世界的な大ヒット曲になるケースも多い。今や音楽は「聴く」だけではなく「見る」ものになっていると言っても過言ではない。とりわけK-POPは映像に力を入れており、数々のアイドルグループが趣向を凝らしたMVをアップしている。

 そんな時代にあって年齢制限が付いているのだ。少しでもスムーズにコンテンツに触れるように整えるのが基本の現代にあって、こういった姿勢はちょっと珍しい。新陳代謝の激しいK-POP界においてベテランの域といえる年齢のアイドルが、妥協なく「見せたいもの」にこだわり抜いて生きる決意がそこにあるようだ。ヴァイオレンスなコンテンツを愛する人間として、途端にユンホに親近感すら湧いてくる。

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