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『天国と地獄~サイコな2人~』不自然なロケ地に隠された謎…物語の鍵を握る「月と太陽伝説」とは

『天国と地獄~サイコな2人~』公式サイトより

 1月24日の夜9時より、綾瀬はるか主演の『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)の第2話が放送される。初回の放送では刑事役の綾瀬はるかと殺人鬼役の高橋一生の魂が入れ替わるという難しい役柄をふたりが熱演し、その高い演技力に称賛の声が集まっていた。世帯平均視聴率も16.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、現在スタートしている新ドラマのなかで最も高い視聴率となり、注目度の高さがうかがえた。

 警視庁の刑事・望月彩子(綾瀬)と、サイコパスな連続殺人鬼・日高陽斗(高橋)の魂が入れ替わってしまうというSF的要素の強いこのドラマ。今後の展開が気になるが、そのロケ地に目を向けると、見えてくるものがあるかもしれない。どうやら撮影は四ツ谷や新宿、豊洲など東京都内を中心に行われているようだ。だが綾瀬と高橋の魂が入れ替わってしまった歩道橋のロケ地は横浜市都筑区にある桜山歩道橋だという。都内にも歩道橋は数多くあるというのに、なぜ少し離れた横浜の歩道橋がロケ地に選ばれたのだろうか?

 それは歩道橋の上で彩子と日高が対峙するシーン。夜空には満月が浮かんでいる。加えて印象的だったのは遠くに見えるオレンジ色にライトアップされた観覧車だ。まるでそれが沈む太陽のように見え、満月と対をなすように見えた。「月と太陽」が大きな鍵を握る『天国と地獄』だからこそ選ばれた特別なロケ地だったのかもしれない。

 そしてもう一つのロケ地、『天国と地獄』のある特別な場所。それは鹿児島の奄美である。この物語のキーとなる「月と太陽の伝説」は、奄美に伝わる古い言い伝えなのだ。その言い伝えとは以下の通り。

 本当は、月は太陽に、太陽は月になるはずだった。というのも、あるとき太陽と月は、今宵どちらかのお腹の上に“シヤカナローの花”(架空の花)が咲いたら、咲いた方が昼の太陽に、もう一方が夜の月になろうと約束をした。そして、その夜、シヤカナローの花が咲いたのは月のお腹の上だった。だが、先に目覚めた太陽がこっそりその花を自分のお腹に植え替えてしまい、太陽は昼の太陽に、月は夜の月になったのだという。太陽は悪いことをしたので、誰も直視することができない姿になり、月は誰もが眺めることができる美しい姿になったのだ。

 第1話で彩子がどこかの浜辺に佇んでいると、突然日高が現れ襲われそうになる、という夢のなかで登場した、ある海岸。そのロケ地は鹿児島の奄美大島の南端にある“ホノホシ海岸”という。波は荒く、砂浜ではなくその荒波に晒されて角の取れた丸い石からなる海岸だ。実はこの海岸には、もうひとつ言い伝えがある。

 それは、この海岸の丸い石を絶対に持ち帰ってはいけない、なぜなら、石を持ち帰ると夜な夜な石が動き出すのだというのだ。そして持ち帰った者にはさまざまな災難が降りかかる、というもの。

 ドラマでは殺人の凶器が丸い石だった。おそらく、夢に出てきたこの海岸の石だろう。

 ここで気になるのは太陽は刑事の彩子、月は殺人鬼の日高を指すのか、という謎だ。だとすると、悪いことをしたのは、太陽である彩子ということになる。彩子は日高と出会う前から奄美の浜に立つ夢を見ていた。過去に訪れたことがあるのかもしれない。シヤカナローの花は、取り返そうとした手柄のことではなく、過去に彩子が持ち去った石だったのか? だが、名前を見ると、彩子の姓は満月を示す“望月”だし、日高陽斗は太陽を示している。

 「陰と陽」「善と悪」が入り混じり、やがてあらゆる価値観が倒錯する。脚本家・森下佳子は脚本を手がけるとき、“両義性”を大切にしているという。悪人を描くときはその人からの視点も書く。善はただの善でなく、悪はただの悪ではない。彩子が振りかざしていた正義は、ただの善ではなく「手柄を立てたい」「認められたい」そんな思いの上にあった。ならば、日高もまた、ただの悪ではないのだろう。もしかしたら、殺人犯ですらなく、真犯人が別にいるのだろうか?

 公式HPには「2人の 魂が入れ替わった先には、互いの価値観を根底から揺るがす、予想もしない真実と“究極の愛”が待っていた ──。」とある。『天国と地獄』を通じ、森下は善と悪の二元論を破壊し、入り混じる混沌のなかにこそある、真実と愛を伝えようとしているのだろか。

 物語は動き始めたばかり。第二話はどのような展開が待ち受けているのか、ロケ地や伝説などにも思いを馳せて、想像を膨らませながら楽しんでいきたい。

■番組情報 日曜ドラマ『天国と地獄~サイコな2人~』
TBS系/毎週日曜日21時~
出演: 綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹ほか
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木 彩
プロデュース:中島啓介音楽:髙見 優
主題歌:手嶌葵「ただいま」(ビクターエンタテインメント)
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tengokutojigoku_tbs/

南沢けい子(ライター)

愛知県名古屋市生まれの食いしん坊ライター。休日はNetflixやAmazonプライムを駆使して邦画や洋画、海外ドラマを観まくるインドア派だが、Netflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に影響されて20インチのミニベロを購入。主人公の男の子たちになった気分でサイクリングロードを走るのが最近の楽しみ。

みなみさわけいこ

最終更新:2021/01/24 21:40
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