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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 大林宣彦ワールドの過激な進化!? 『ザ・スイッチ』

殺人鬼とシャイな女子高生の体が入れ替わった!? 大林宣彦ワールドの過激な進化『ザ・スイッチ』

自身の肉体と戦うことになるクライマックス

殺人鬼ブッチャーの強靭な肉体を経験したことで、ミリーは性格面にも変化が生じる。

 はたして、おっさんとなったミリーは、殺人女子高生となったブッチャーから体を取り戻すことができるのか。元の体に戻るための制限時間は24時間。物語後半、心と体が入れ替わった2人が対峙することになる。自分の肉体から離れ、他者になったことで初めていろんなものが客観的に見えてくる。

 内気なミリーをずっと悩ませてきたコンプレックスを、ずばり指摘してみせる女子高生の体に宿ったブッチャー。だが、殺人鬼の体を持つミリーも、それまでの臆病な女の子ではなくなっていた。お互いの意識が入れ替わった自分の肉体と戦うという、世にも奇妙な珍バトルが繰り広げられる。肉体から生まれてくる抑えがたい感情もあり、また意識していても思うように体が対応しないというもどかしさもある。自分の欲望に正直になれたという点に関しては、ミリーは殺人鬼ブッチャーに感謝してもいいかもしれない。

 ボディスイッチものとなる本作は小林聡美&尾美としのり主演作『転校生』、『ハッピー・デス・デイ』はタイムリープものの先駆作『時をかける少女』(83)と、クリストファー・ランドン監督は大林監督の「尾道三部作」のうち2作をうまく現代的なセンスで蘇らせたことになる。おそらく大林監督の蒔いた映画的遺伝子は、細田守監督の劇場アニメ『時をかける少女』(06)、新海誠監督の大ヒットアニメ『君の名は。』(16)などを介して海外に今なお広まりつつあるのだろう。そう考えると、チェンソーを笑顔で振り回すミリーは、大林監督が故郷・尾道で撮ったヒロインたちと遠縁の関係にあると言えなくもない。

 さよなら私、さよなら俺。殺人女子高生ミリーが、とても愛おしく思えてくる。

『ザ・スイッチ』
監督・脚本/クリストファー・ランドン 脚本/マイケル・ケネディ 製作/ジェイソン・ブラム
出演/ヴィンス・ヴォーン、キャスリン・ニュートン、セレスト・オコナー、ミーシャ・オシェロヴィッチ
配給/東宝東和 近日全国ロードショー
(c)2020 UNIVERSAL STUDIOS
https://theswitch-movie.jp

最終更新:2021/01/14 21:00
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