殺人鬼とシャイな女子高生の体が入れ替わった!? 大林宣彦ワールドの過激な進化『ザ・スイッチ』
#映画 #パンドラ映画館
意識が変わることで、キャストの表情も大きく変化
主人公の心と体が入れ替わってしまうボディスイッチものは、新垣結衣と舘ひろしが入れ替わる『パパとムスメの7日間』(TBS系)やメグ・ライアン主演映画『キスへのプレリュード』(92)などがあるが、やはり最高傑作は大林監督の『転校生』だろう。男子中学生の一夫(尾美としのり)と女子中学生の一美(小林聡美)の心が入れ替わることで、思春期の2人はお互いのナイーブな内面や男女間の生理的な違いを理解することになる。
立場の違う2人がお互いの役割を交換することで、それまで気づかなかった新しい視界が広がっていくのが、このジャンルの面白さだ。心理療法や犯罪者の更生プログラムなどで用いられるロールプレイ(役割療法)に通じるものがある。感情の吐き出し方が分からずにいた女子高生ミリーは、殺人鬼と体が入れ替わることで感情を思いっきり爆発させることを覚える。それまで周囲の意見に従ってばかりいたミリーだが、事件をきっかけに内面にも変化が生まれていく。
ミリー役を演じるキャスリン・ニュートンも大変身を遂げる。自己主張できない女子高生から、欲望の赴くままに暴れ回る悪女へとスイッチする。華奢な女の子だと舐めてかかったヤツは、次々と頭をカチ割られることになる。もちろん衣装やメイクの違いもあっての変身だが、同じ女優が演じているとは思えないほどの別人格となっている。与えられた役が変わり、意識が切り替わることで、行動や言葉遣いだけでなく、顔の表情まで大きく変わっていく。『名探偵ピカチュウ』(19)で新人記者役をそつなく演じていたキャスリンにとって、絶好のステップボードになりそうだ。
殺人鬼ブッチャー役のヴィンス・ヴォーンは、米国内で大ヒットした『ウェディング・クラッシャー』(05)や『ハニーvs.ダーリン 2年目の駆け引き』(06)などに主演した人気コメディアン。おっさん俳優のヴィンスが、心は女子高生になって「いや~ん」と女の子走りで逃げ惑う。スプラッターホラーなのに、思わず爆笑してしまう。ミリーの憧れの男子との、ラブシーンまで用意されている。キャリアの長いヴィンスにとっても、女子高生役は初めてだろう。心は女子高生なおっさん役を、ヴィンスは楽しんで演じている。配役のシャッフルは、作品全体に新鮮さをもたらす。キャストにとっても、貴重な体験となり、演じがいがあるに違いない。
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