殺人鬼とシャイな女子高生の体が入れ替わった!? 大林宣彦ワールドの過激な進化『ザ・スイッチ』
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内気な女子高生の体が、なんと連続殺人犯である中年オヤジの体と入れ替わってしまった。殺人鬼の心を宿した女子高生は、陰険な教師やいじめっ子たちを次々とぶっ殺して回る。死体の数が増えれば増えるほど、観客の気分も爽快に。大林宣彦監督の名作『転校生』(82)などでおなじみの“ボディスイッチ”もののスプラッター版となっているのが、クリストファー・ランドン監督の『ザ・スイッチ』(原題『Freaky』)だ。B級映画ならではの軽快なホラーコメディとなっている。
ランドン監督は『ハッピー・デス・デイ』(17)と続編『ハッピー・デス・デイ 2U』(19)のヒットメーカーとして知られている。『ハッピー・デス・デイ』は女子大生が誕生日に殺され、目が覚めると誕生日の朝に戻っているというタイムリープものの秀作だった。女子大生にはまるで見えないビッチなヒロインが、死んで生まれ変わる度に、友達想いの“いいヤツ”に変容していく様子にキュンとさせられた。本作も自己評価の低い女子高生が快楽殺人鬼に変身し、楽しげにチェンソーを振り回す姿に魅了される。
説明が不要なほどシンプルな物語だが、一応触れておこう。女子高生のミリー(キャスリン・ニュートン)は母親と姉との3人暮らし。家を出て大学に進学したいが、父親を亡くしてからアルコール依存症になってしまった母親に気兼ねして、進学のことは言えずにいた。地元の警察署に勤める姉・シャーリーンは快活な性格だが、そんな姉に対してもミリーはコンプレックスを抱いている。不満を口にすることなく、ミリーはいい子ちゃんキャラを通してきた。
内向的な性格が災いし、高校ではいじめの標的にされていたミリー。同じクラスの男子に憧れているものの、もちろん告白する勇気はない。アメフト大会の帰り道、迎えに来るはずだった母親は酔っ払って自宅で爆睡中。ひとりぼっちでいたミリーは、不気味なマスクを被った殺人鬼に襲われるはめに。
ところが、殺人鬼に刃物で刺された瞬間、世にも不思議なことが起きた。翌朝、見知らぬ廃工場で目が覚めたミリーは、自分の体が中年オヤジ(ヴィンス・ヴォーン)になっていることに気づく。オーマイガッ! この中年オヤジこそ、世間を騒がせている連続殺人鬼ブッチャーだった。
一方、ミリーの体を手に入れたブッチャーは、ルンルン気分でミリーの通う高校に登校する。いつもオドオドして伏し目がちだったミリーが、真っ赤な革ジャンを着て、目をギンギンに輝かせて現れたので学校中が騒然となる。いつもはミリーに冷たい男子生徒たちが、危険な匂いを振りまくミリーに群がり、「今晩、パーティーに行こうぜ」と言い寄ってくる。おいしいカモたちが向こうから集まってくれる、うれしい展開。思わず舌舐めずりする殺人鬼ミリーだった。
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