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『徹子の部屋』とゆりやんレトリィバァとテレビの予定調和と

‘タモリ「俺、本当は社会に向いてないのかなと思う」’

 毎年放送されているNHK総合の『ブラタモリ』と『鶴瓶の家族に乾杯』のコラボ番組。今年は3日に『タモリ×鶴瓶 新春SP2021』としてお送りされていた。ただ、コロナ禍が続く中で例年のようなタモリと鶴瓶のロケは無し。スタジオでVTRを見たりトークをしたりといった内容になった。

 で、2人が過去のロケで出会った人などにカメラを向けたVTRで尋ねられていたのは「大変だったけど良かったこと」。コロナ禍になりテレビでは「大変なこと」が多く報じられる中、確かに「大変なこと」はたくさんあるのだけれど、その中でも経験された個人的な「良いこと」が伝えられた放送だった。

 中でも印象的だったのは、鶴瓶が以前、愛知県で出会った帽子職人だ。彼は言う。

「2カ月ぐらいですかね、ずっとここにこもって作業だけしてたんですね。お客さん入れないようにして。それがめちゃくちゃ楽しくて。お客さんが来るとドキッとしちゃうんで、全然そんなこと気にせずに作業だけしていられるっていうのが僕は最高でしたね」

 これを受けてタモリが語る。

「このコロナになって、こういう方の気持ちがすごいわかる瞬間があるんだよ。俺は本当はこういう人だったんじゃないかと思うの。俺、本当は社会に向いてないのかなと思う」

 自分は本来、他者とのコミュニケーションが苦手な人間なのではないか、とも語るタモリ。かつては毎日お昼にさまざまな著名人と「友だちの輪」をつないでいた男の、非社会性の告白。タモリはさらに言う。

「(社会に)向いてない人っていっぱいいると思うんだけども、向いてるフリをして無理してみんな生きてるのがね、わかるなという気がしてきたね」

 なお、帽子職人は鶴瓶の印象を次のように語る。

「そこにいるのにそこにいないような感じでしたね。ひらたく言えば、心が通じ合わないんだろうなっていう気がしたというか。花とか風とか、そういうのと喋ってるような感じです。目の前にいる人のことはたぶん見てないし、笑顔っぽい顔をしているだけ」

 これをタモリは「見事な描写」と絶賛。タモリがこれまで繰り返してきた「目の奥が笑ってない」といった鶴瓶への分析的な評価を、詩的に書き直したような鶴瓶の描写だった。

 一方、帽子職人はタモリについての印象を聞かれると、しばらくの沈黙の後「なんにもないですね」とひと言。これはまたこれで、タモリに対する「見事な描写」だったのかもしれない。

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