日米関係がさらに混迷…米駐日大使が長期空席、赴任は夏以降か?
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白紙に戻った駐日大使人事、初の日系人大使誕生か?
バイデン政権の発足後も、“最優先課題ではない”駐日大使人事は大幅に遅れる見込みだ。指名されても、実際に駐日大使が日本に赴任するのは夏以降という見方もあり、そうなるとすれば空席は2年近くとなる。
バイデン次期大統領は駐日大使について一言も言及していないが、民主党系シンクタンク「アメリカ進歩センター」のシニア・フェローで日系三世のグレン・フクシマ氏の名前が候補の1人として浮上している。日米協会の理事で、過去には米通商代表部(USTR)などで働き、日本滞在歴も20年に及ぶ。慶応義塾大学、東京大学への留学経験もあり、日本語も母国語並みに話す。同進歩センターの所長だったニーラ・タンデン氏がバイデン政権の行政管理予算局(OMB)局長に指名されていることから、同進歩センターでの経歴もプラスだ。初の日系米駐日大使のポストも夢ではないのだろう。
しかし、日本社会には長年にわたり、日系人を蔑む風潮があるようだ。以下に、一橋大学教授・貴堂嘉之著の『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書)からエピソードを引用する。
上院議員を50年近く務め、米国における日系人の地位向上にも大きく貢献したダニエル・イノウエは米連邦下院議員時代の59年に来日し、当時の岸信介首相と面談した。
その時、イノウエが「いつか日系人が米国大使となる日が来るかもしれません」と水を向けると、岸は「日本には、由緒ある武家の末裔、旧華族や皇族の関係者が多くいる。彼らが今、社会や経済のリーダーシップを担っている。あなたがた日系人は、貧しいことなどを理由に、日本を棄てた『出来損ない』ではないか。そんな人を駐日大使として受けいれるわけにはいかない」と冷たく言い放ったという。
現在、名前が浮上しているフクシマ氏についても、「能吏だが歴代の大使と比べると軽量級だ」(霞が関官僚)、「本人が必死に猟官活動をしているだけ。所詮は小物」(与党政治家)などの批判的な声が一部からは聞かれる。
しかし、日系人の米駐日大使候補は、フクシマ氏だけではない。ケネディ大統領が1950~60年代にハーバード大学で東洋史を教えていた知日派のエドウィン・ライシャワー教授を駐日大使に指名した前例にならえば、『歴史の終わり』(三笠書房)を書いたフランシス・フクヤマも立派な米駐日大使候補だ。本人は最近でこそ、新保守主義(ネオコン)とは距離を置くが、「歴史の終わり」は長年にわたり、ネオコンの理論的支柱だった。フクヤマなら、与野党勢力が拮抗する上院で、共和党の支持も得られそうなので、超党派から支持される駐日大使の誕生も夢でない。
米国ではオバマ政権下の11年に、中国系の駐中国大使、韓国系の駐韓国大使がそれぞれ誕生している。そろそろ初の日系人の米駐日大使が誕生してもよい時期なのではないだろうか。フクシマ、フクヤマ、どちらでも素晴らしい米駐日大使となることは間違いない。
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