菅義偉の命運は絶たれたーー野田か石破か岸田か“次の総理”は一体誰か?
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クルーグマンが予測する茨のアメリカ
ここで、前回紹介しなかった「文春」のポール・クルーグマン(ノーベル経済学書を受賞)のアメリカについてのインタビューを紹介しよう。
タイトルは「アメリカの前には茨の道しかない」。なかなか示唆に富んでいる。
――二〇二一年の一月五日に行われるジョージア州選出の上院議員選挙で共和党が二議席のうち、一議席でも取れば、共和党が上院で過半数を維持することになり、バイデンが国を統治することはほぼ不可能になるだろう。そうなれば、バイデンの国内政策はことごとく上院で否決されるからだ。
(中略)
もし上院の過半数を共和党が握り、国民の健康を最優先しないで、バイデンの政策をできるだけ阻止しようとする悪意を持てば、いくらでもそうできる。バイデンはすでにレイムダック大統領と言われており、一期で終わるだろうが、国内政策についてはほとんどこれといった実績を残せない可能性もある。
(中略)
バイデンが大統領になって、政治において礼節と協力の復興が見られると思ったら、それは救いようがないほど甘い考えた。二〇二十年代のアメリカは陰謀論に満ち溢れ、深く分断されたままになるだろう。この分断はそもそもトランプが作ったものではなく、もともと存在していたものである。トランプがやったことは、その分断を可視化し、さらに悪化させたことだ。
陰謀論の最たるものが「Qアノン」が提唱する「ディープ・ステート」(闇の国)である。それによれば、アメリカは「ディープ・ステート」に支配されている。「ディープ・ステート」は、自分たちを豊かにするために国民をコントロールする大きな政府を築きたいと思っている民主党員によって動かされていると考えられている。
共和党員のマジョーリー・テイラー・グリーンは人種差別的な考えを表明し、「Qアノン」の陰謀論に対して支持を表明したが、驚くべきことに下院議員の席を勝ち取った。一見、荒唐無稽に思える「Qアノン」の思想は当初、社会の末端から出てきたが、今や主流に入ったと言っても過言ではない。
アメリカの大統領選は、ご存知のように勝者総取り方式であるから、獲得した選挙人の数だけをみて判断することは非常に危険だ。中身を見ると敗北したトランプでさえも約七四〇〇万票を獲得しており、歴代二位である。二〇一六年にトランプが勝ったときよりも多い。これを見ると、トランプ支持者がいかに多いかわかる。
女性はトランプ離れしたと言われているがそんなことはない。それが言えるのは黒人女性であって、逆に白人女性はトランプ支持者が増えた。だから、これからの四年で民主党が国内政策でこれといった実績を残すことができなければ、そして二〇二四年にトランプが立候補すれば、トランプが勝利を収める確率はぐっと上がるだろう。
トランプは四十七年間のバイデンの政治生活人生を、“All talk and no action!”(口先ばかりで行動が全く伴わない)と痛烈に批判してきた。確かにそれは当たっているだろう。冷静に見るとバイデンは特にこれといった実績を残していないことは明らかだ。
大統領選でバイデンが勝利を収めたといっても、圧倒的な支持を得たわけではないことを認識しなければならない。
(中略)
国際舞台ではトランプはかなりひどいことをしてきた。独裁者を支持し、民主主義を弱体化させた。パリ協定を脱退し、WHO世界保健機構)からも脱退すると表明した。
バイデンがこれを元の状態に戻そうとしても、割った卵を元の形に戻すことができないのと同じように、失われた信用をこれからの四年で取り戻すことはできないだろう。信用を取り戻すには何十年もかかるだろう。アメリカという国がドナルド・トランプという反民主主義的な指導者を選んだことをどの国も忘れないだろう。しかも、二〇二四年の大統領選でトランプがまた立候補する可能性も出てきている。アメリカの前には茨の道しかない。
(中略)
アメリカにとって国際舞台で最も重要な国は言うまでもなく中国だ。台湾問題にしても習近平の言動にしても最近の中国をみていると、中国はますます勢いを強めていることは論を俟たない。中国との関係でも日本は難しい舵取りを強いられるだろう。米中関係はバイデンが大統領になるぐらいでは改善しないからだ。
(中略)
アメリカが中国に対する攻勢を強め、日本が同調するよう強いられた場合、日本はどう動くのか。中国との経済関係が悪化すれば、日本経済が受ける打撃は甚大である――
日米基軸といっていればよかった古き良き時代は終わった。これからは中国を無視して、経済も外交も安保もできはしない。
バイデンなら大丈夫だという、何の根拠もない神頼みでは、日本という国はお先真っ暗である。
アメリカとも中国とも、韓国とも話の出来るリーダーが出てこないものか。
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