世界で大ブーム『クイーンズ・ギャンビット』カメラワーク、衣装、監督…すべてが一級品のやばすぎる本気度
#アニメ #フェス #Netflix #鬼滅の刃 #産業医と映画Pによる配信作品批評「ネフリんはほりん」
サブカル好き産業医の大室正志とB級映画プロデューサーである伊丹タンが、毎回ひとつのVOD作品を選んで、それぞれの立場から根掘り葉掘り作品を掘り尽くす本連載。
たくさんの話題作が生まれた2020年。その中でもふたりが20年を象徴するタイトルとして選んだのが、Netflixオリジナル配信ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』だ。1960年代を舞台に、チェスの天才少女エリザベス・ハーモン(演:アニャ・テイラー=ジョイ)の成長物語を描いた本作は、10月28日に全7話が一挙配信されると、わずか28日間で世界6200万世帯に視聴されるという記録的大ヒットに。
このメガヒットを受けて、チェス関連の製品の売り上げが3桁も増加(カナダの玩具メーカー、スピンマスター発表)したという。社会現象を巻き込むほどの『クイーンズ・ギャンビット』フィーバーはなぜ起こったのか。今回もふたりが独自の視点で作品を考察する。
雰囲気は暗くて「次回が気になる!」的作品ではないが…
――本作にどんな印象を抱きましたか?
伊丹 Netflixオリジナルの代表作になった、といえるほど素晴らしい傑作……ということが前提なんだけど、ストーリー的な面白さはありつつも視聴している途中は、最後まで見続けようか苦しいかも……と感じる人も多かったんじゃないかなって印象ですね。
大室 確かに。Netflixの人気作って、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(13~18年)もそうだけど、スタイリッシュに見せる一方で、ドラマとしての展開はベタというか、プロットの味付けはジャンクフードみたいにかなり濃い。同じベタ展開のVシネや昼ドラがマクドナルドだとしたら、パッケージが洗練されているNetflix作品はシェイクシャック、みたいな(笑)。だけど、『クイーンズ・ギャンビット』のストーリーは、ベタはベタなんだけど、そこまでコテコテではないね。
伊丹 内容的にはチェスを舞台にした、天才少女のスポ根ものと言えなくもない。ただ、孤児院育ちで薬とアルコール中毒、という重い設定も背負わされていて、主人公のハーマンには常に試練が訪れる。作品の空気もかなり重い。1話ごとにわかりやすいカタルシスはなくて、クリフハング(飽きさせないように続きが気になるところで、次回へ引っ張るドラマの定番手法)も各話ごとのあざといやり方はあまり見られなかったな。
大室 前回話した『コブラ会』はジャンク的というか、かっぱえびせんみたいに次へ次へと止まらくなったのとは対照的だ。
――ではなぜここまで多くの視聴者を引き付けられたのでしょうか?
伊丹 主演のアニャ・テイラー=ジョイの存在がまずひとつ。作品のアイコンとして圧倒的だった。彼女はこれを機に世界的大女優になると思うよ。日本人から見ると正統派美人じゃなくて、特徴的な顔をしてるけど。
大室 欧米だと目が離れていると美人と認識されやすいよね。ジャクリーン・ケネディ・オナシスとかさ。アニャはコケティッシュな魅力も強かった。それと映像のクオリティがスゴイから世界に没入できるんだよね。衣装は『セ○クス・アンド・ザ・シティ』(98~04年)くらいこだわってるし、シーン一つひとつがMVみたいに本当にスタイリッシュだった。
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