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新型ウイルスの感染拡大で既成社会は完全崩壊!? 大ヒットしたゾンビ映画の続編『新 感染半島』

ゾンビとの共生を受け入れる新世代の子どもたち

新型ウイルスの感染拡大で既成社会は完全崩壊!? 大ヒットしたゾンビ映画の続編『新 感染半島』の画像2
常識を守る男だったジョンソク(カン・ドンウォン)は、常識を捨てざるをえない状況に。

 ゾンビに気づかれないよう、夜のうちに韓国への上陸を果たすジョンソクたち。街は4年間ですっかり荒廃していた。現金輸送車はうまく見つけることができたが、うっかり鳴らしてしまった車のクラクションに、音に敏感なゾンビたちが反応。街中のゾンビがぞろぞろと群がり、ジョンソクたちを囲んでしまう。ジョンソクの銃器が火を吹くものの、ゾンビの数が多すぎてどうにもならない。

 絶体絶命のピンチに陥ったジョンソクを救ってくれたのは、まだ幼い女の子たちだった。ジュニ(イ・レ)とユジン(イ・イェオン)の姉妹は、巧みなドライブテクニックを見せ、ゾンビたちを振り切ってみせた。ジュニとユジンは母親のミンジョン(イ・ジョンヒョン)、血は繋がっていないが姉妹に優しい初老の元軍人・キム(クオン・ヘヒョ)と一緒に隠れ家で暮らしていた。一方、頼りのジョンソクとはぐれたチョンミルは、街を支配する荒くれ軍人たちの集団「631部隊」に拉致されてしまう。

 ゾンビタウンと化した荒れ放題の街で、ジョンソクとチョルミンがそれぞれサバイバルする様子は、ダニー・ボイル監督の『28日後…』(02)やジョージ・A・ロメロ監督の『ランド・オブ・ザ・デッド』(05)などの人気ゾンビ映画の美味しい要素の組み合わせとなっている。前作では“リアル筋肉マン”マ・ドンソクが剛腕一本でゾンビたちをなぎ払う姿が見どころだったが、今回はより派手に銃撃戦&カーチェイスが繰り広げられる。カン・ドンウォンら韓国の俳優たちは兵役を経験しているので、ガンアクションがとてもリアルだ。

 物語後半はミンジョンたち一家がジョンソクに協力し、「631部隊」の手に落ちていた現金輸送車を奪い、ゾンビタウンからの脱出を目指す。ゾンビだけでなく、「631部隊」も敵に回すことになる。夜の市街地で、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)さながらのデッドヒートが演じられる。映画の冒頭では気弱そうな妊婦だったミンジョンは、すっかりたくましいシングルマザーとなっていた。子どもたちを守るためなら、ゾンビだけでなく人間にも平気で銃を向けることができる。父と娘との泣かせるドラマだった前作から、母と娘が過酷な世界をタフに生き抜くハードな母子サスペンスに本作はなっている。

 ゾンビタウンで生きていくには足手まといになると思われがちな子どもたちだが、大人の窮地をたびたび救うことになる。大人たちはゾンビだらけの地獄のような世界から早く逃げ出すことしか考えていないが、ゾンビタウンで生まれ育った姉妹にとってはここがホームグランドだった。誰よりも自分たちのことを愛してくれる母親のミンジョンと一緒なら、地獄の日々さえも姉妹たちには愛おしかったのだ。

 先行きの読めないコロナ禍で多くの大人たちはくたくたに疲れてしまっているが、これから生まれてくる若い世代は未知なるウイルスや災害とも共生する世界を受け入れていくのだろうか。単純なゾンビアクションものとして片付けられない、現代的なテーマが隠し味となっている。

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