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受験は結局「課金ゲーム」なのか──ゆとり教育と日能研が火をつけた中学受験と受験メディアへの功罪

中学受験をもてはやすメディアの功罪

受験は結局「課金ゲーム」なのか──ゆとり教育と日能研が火をつけた中学受験と受験メディアへの功罪の画像2
「プレジデントFamily」と「AERA with Kids」。両誌とも、受験生の親に向けた情報が満載だ。

 無論、中学受験、そして私立中高一貫校にはいい面もあるのはまぎれもない事実だ。さまざまな特色を持った学校から、子どもに合ったところを自分たちで選べる。中学受験自体も、小学校の勉強では物足りないという優秀な子どもの知力を伸ばすには、格好の場所であることに疑いはない。また、私立中高一貫校の多くは男女別学だが、これについてもさまざまなメリットがあると、前出の小山氏は話す。

「特に幼い男子の場合、12歳前後の年だと、女子のほうが精神的に成熟していることが多く、女子の迫力に押されて自分らしさを発揮できないことがあります。学年が上がっても、共学校だとコンピューターや物理学など、特殊な分野に熱中するとオタクと呼ばれて女子から嫌厭されることもありますが、男子校だとむしろ尊敬されて、伸び伸びと才能を伸ばせることもある。異性の目を気にせずに過ごせるというのは、大きなことだと思いますね」

 また、女子校についても、小山氏は、「共学だとどうしても女子が男子のあとをついていくようになりがちなのですが、女子校ではなんでも自分たちでやるしかないので、リーダーシップのある女性が育ちやすい土壌はあります。ただ、女子同士に特有な微妙な人間関係が苦手な子は、共学のほうが向いているかもしれませんね。一時は共学が人気でしたが、今は別学の良さが見直され、学校側も積極的にその良さを発信しています。男女の成長の違いを熟知した先生たちが指導するので、子どものいい面を伸ばすには、男女別学のほうがメリットが大きい面もかなりあるのです」と続ける。

 鳥居氏も、次のように話す。

「中学受験をもてはやすメディアの功罪にはどのようなものがあるかといえば、勉強することは良いことだという価値観を広めた点は確かに功績があるかと。一方で、受験しなければいけないとあおる方向に走りがちなので、人生において何が大切かをよくわかっていない親にはリスクのある情報を与えてしまっていると思います」

 鳥居氏によると、中学受験がきっかけで夫婦喧嘩が増え、家庭不和になったり、離婚するケースすら珍しくないそうだ。

「中学受験に失敗してしまう家庭には、明らかに共通点があります。自分と子どもを同化させてしまって、切り離して考えられない。偏差値や成績でしか学校や子どもを評価できない。他人の目が気になりすぎて、他人の価値観に乗っ取られる。あるいは、自分の生活に不満があるため、子どもを一流校に入れることでリベンジしようと考えている……こうした親は、中学受験はしないほうがいいでしょう」

 と言いつつ、今回話を聞いた鳥居氏も小山氏も、子どもを中学受験させて私立校に入れた母親でもある。鳥居氏は、私立中高一貫校のよさについて最後にこのように力説する。

「私立校というのは、繰り返しになりますが100年以上前に財界人や宗教家が、私財を投げ打ち、あるいは命をかけて、この国に役立つ大人を育てたいと設立した学校ですから、今でもその精神が受け継がれているんです。そのよさというのは、塾が配る偏差値ランキング表では計ることができないもので、実際に学校に足を運んで、その教育理念に共鳴した学校を子どもに受けさせるべきです。私は私立校の校長をよく取材するのですが、生徒に対するその愛情の深さに、感心することもしばしばです。

 中学受験は12歳までに人生に必要な基礎教養を身につけられる素晴らしい機会ですし、公明正大な試験で努力が報われるという経験もできる。たとえ不合格になったとしても、親がしっかりした考えを持っていれば、その痛みを知る経験も人生のプラスにできると、私は確信しています」

 中学受験を素晴らしい経験にするか。あるいは、子どもにマイナスの意識を植え付けさせてしまうか。それを左右するのは、親としての成熟度と人間力なのだ。
(文/里中高志)
※「月刊サイゾー」11月号より一部転載。全文は「サイゾーpremium」でお読みいただけます。

里中高志(ジャーナリスト)

フリージャーナリスト。精神保健福祉士。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に『栗本薫と中島梓 世界最長の物語を書いた人』(早川書房)、『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)、『触法精神障害者 医療観察法をめぐって』(中央公論新社)。

最終更新:2023/01/26 18:32
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