音楽の認知もインフルエンサー強し──「TikTokでバズれ」は老害!? 業界が頭を悩ます10代販売戦略
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旧態依然の戦略……利益至上主義の障壁
A 私は「若人の気持ちも理解できるおばさん」でありたいと思うんだけど、どうしても知識と経験というプライドが邪魔をして、部下の意見に素直に耳を傾けられないことがあるんだけど、みなさんどうです?
D インスタで情報を発信するときに、改行なしで死ぬほどハッシュタグを作っていた上司がいたので、「それは逆効果かと……」と声をかけたら、「引っかかる率がアップするだろうが!」とか怒鳴られたことはあります。
C 私の場合、ツイッターの“中の人”を担当している、別部署の40代の上司がいるんですが、サブスクで新曲が配信されたと同時に「好評配信中!」ってツイートしていたんですね。そのとき「今、配信されたばかりなので、好評と書くのは早いんじゃ……?」って伝えたら、ムッとされました。私も30代なので定例句を使ってしまいがちですが、できるだけ若者目線の言葉を選んだり、びっくりマークの連発や「Don’t Miss it!!」とか、文字から時代感がにじみ出るような言葉は避けるようにしています。10代の子たちは、SNSにおける“押しつけがましい文言”には、すごく敏感だと思うので。
B けど、コアなファンもついているアーティストの情報だと、その若者目線の軽い言葉が仇になったりするんですよね。しかも、「公式なのにスペル間違えんなよ」とか、ぶっきらぼうなリプライがきたりするので、推敲に推敲を重ねて投稿するようにしてます。
C 私個人としては、SNSは“アーティスト認知の強化”であって、利益に直結するツールだとは考えていないんです。でも、会社は「そんなプロモーションに何か意味があるのか」や「わかりやすい数字を出せ」とか、SNSのプロモーションには非協力的だったりする。SNSにおける音楽のプロモーションはタピオカと一緒で、「なんか流行ってるよね」「あちこちで耳にするよね」とか、騒げば騒ぐほど話題になる、気になっていくものだと思うんです。
D 情報量が多い10代を動かす、気にかけてもらえる何かを作ってもらう作業は簡単と思っている上の世代が多いんですけど、すごくアイデアと根気のいる作業なんですよね。
A 弊社のSNS担当に「そんな少ないフォロワー数に向けて、何を一生懸命仕事、発信してるの?」とか「そんな短い文章を1日考えてるだけで給料もらえてうらやましいわね」って思ったりしていただけに……ちょっと耳が痛いです。
C まずは興味を持ってもらえる施策を練らないと、何を発信しても関心を抱いてもらえない。「BTSがアメリカのビルボード・チャートで首位を獲得しました」というニュースは、テレビやネットニュースの見出しでなんとなく把握していると思うんですが、そこから一歩足を踏み入れてもらうために何をするか? が大事。それを押しつけがましくなく、わかりやすく伝えるのがSNSの役目だと思っています。
B ちなみに「アーティストに興味を持つ」「サブスクやYouTubeの再生回数を伸ばす」をクリアできたら、最終的に「CDを買ってもらう」という目標は持っていますか? 今、うちの会社は「CDを作る手間やコストを考えたら、新しい曲の制作費に充てる」といった考え方にシフトしてきていて、CDの存在が一時のMDみたいな感じになってます。
D その目標は、まだありますね。ただ、アーティストの特性によりけりで、「これはCDのプロモーションよりも配信に予算を割くべき」といった臨機応変型にはなってきているかと思います。ただ、サブスクの定着やTikTokの台頭など……新しい何かに注力しようとすると、また新しい何かが登場するご時世なので、どこにどんなチャンスが隠れているか、日々手探り状態です。
B 最近だとオンラインゲーム『フォートナイト』でのトラヴィス・スコットのバーチャル・コンサートは衝撃でしたよね。登録ユーザー数は3億人以上で、もともとトラヴィスを知っているユーザーは「トラヴィスすげー!」だし、初めてトラヴィスの存在を知ったユーザーは「何このラッパー、かっこいい!」状態。こういった施策は本当に画期的だし、面白いなと思いました。
C こういった目先の利益に縛られないクリエイティブな施策は、絶対的に若者に刺さりますよね。
A 実際にSNSで熱心にコメントをくれる子のアカウントをチェックしたりすると、プロフィール部分には「○○中学校3年です」や「○○高校サッカー部所属」とか書いてある。こういった若い世代を突き動かして、長いことファンでいてもらえる施策を、これからも考えていかないとね。
(文・構成/讀賣蘭堂)
※「月刊サイゾー」11月号より一部転載。「サイゾーpremium」で全文お読みいただけます。
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