ゴーン逃亡から一年…拘置所で生身で責め続けられる日本の刑事司法制度の現在地
#司法 #カルロス・ゴーン
取調べ時の弁護人立ち合いを認めない日本、中国、北朝鮮
「弁護士の取調べ立ち合いは可能」とする回答を法務省から引き出した、刷新会議委員の後藤昭氏が11月25日に開催された国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」と「『取調べへの弁護人立ち合い』を求める法律家の会」の主催によるオンライン勉強会で基調講演したので、筆者も参加した。
取調べに弁護人が立ち会えない現状について、後藤氏は「法務省がQ&Aの形で『取調べによる真実解明が難しくなる』と答えているが、これは(日本の刑事司法制度を)批判している人達を納得させる議論ではない。
弁護人を立ち会わせないようなところで取調べて供述を得る、自白させるということは、被疑者の権利保証の観点からも真実を発見するという観点からも非常に危険である」と述べた上で、今後生産的な議論をできるようにするためにもまずは「試しにやってみるべき」と、試験的にでも取調べにおける弁護士立ち会いを、早期に実施するよう提案した。
12月24日に、一連の同刷新会議の議論を踏まえた最終報告書が、上川陽子法務大臣に提出されたが、その中で、「『取調べに弁護人を立ち会わせると真相解明が困難になる』といった弁護人が捜査妨害をすることを前提にしたような内容では諸外国の理解を得ることはできない」、「国際社会からの理解を深めるためにも、その点(取調べにおける弁護士の立ち会い)が取調べを行う検察官の裁量に委ねられている点を明記すべきである」といった点が盛り込まれた。
国連人権理事会の恣意的拘禁に関する作業部会は11月20日付の意見書で、ゴーン氏が、日本での刑事手続きで勾留されたことについて、「恣意的(しいてき)な拘禁」にあたるとする見解を公表した。意見書の中には申立人であるゴーン氏の「弁護人の立ち会いなしで日本語の書面にサインを強要された」、「2カ月半の拘留中、弁護人の立ち会いもなく、毎日、検察官の取調べを受けた」などとする取調べの状況も記載された。【参考:https://www.ohchr.org/_layouts/15/WopiFrame.aspx?sourcedoc=/Documents/Issues/Detention/Opinions/Session88/A_HRC_WGAD_2020_59_Advance_Edited_Version.pdf&action=default&DefaultItemOpen=1】
とはいえ、どんな事情があるにせよ、裁判を前にレバノンへ逃亡したゴーン氏の行為は正当化されるべきではない。英雄視されるべきではないし、逃亡劇のハリウッド映画化など言語道断だ。
逃亡後行われた記者会見で当時の森まさこ法務大臣が「不法出国の罪にあたる犯罪であるので、逃走を正当化する理由にはならない」と述べたが、これに激しく同意する。
その一方でもし、自分が、日本同様、弁護人の立ち会いが認められていない中国や北朝鮮で身に覚えのない罪で逮捕され取調べを受けたらどうなるのかと想像すると恐ろしさに身が震えてしまう。
そうなった場合、村木厚子氏が述べたように、プロボクサーである検察、取調官の前に無理やり立たされた自分には、せめてセコンドとなる弁護士はつけてもらいたいと切に願う。もしそれすら叶えられなかったとしたら――。
自分も弱い人間だ。収容先の拘置所で首を括るか、もしくはゴーン氏同様、違法と分かっていても、逃亡を企てるしかないのかもしれない。
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