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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 『富豪刑事』タッキーとの舞台裏…伊藤監督語る

『富豪刑事』タッキー社長との舞台裏…伊藤智彦監督と振り返る2020年のアニメ業界

新型コロナが新人声優にダメージ、『富豪刑事』楽曲制作の舞台裏…伊藤智彦監督と振り返る2020年のアニメ業界の画像1
アニメ『富豪刑事 Balance:UNRMITED』(フジテレビ系)ウェブサイトより

『劇場版ソードアート・オンライン~オーディナル・スケール~』『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』など数々の作品を手掛けた伊藤智彦監督とともにその年のアニメ業界を振り返るインタビュー。

 前編では『鬼滅の刃』のヒットの理由について聞いたが、後編は新型コロナウイルスの影響、さらに2020年の監督作『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の舞台裏について。話は2019年に裏方に回った滝沢秀明さんの話におよびーー。

 前編はこちら

アニメ業界の新人に大きかったコロナの影響

ーー2020年を振り返るとやはり新型コロナウイルスの年でした。伊藤さんが監督された4月スタートのアニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』もコロナの影響で第3話以降が延期となり、7月に改めて第1話から放送されました。

伊藤:実はアニメ業界では3月の緊急事態宣言が出る前からずっと「本当にできるのか」と話に上がっていました。中国に動画の仕上げを出しているからです。1月末の時点でずっと注意喚起をしていて、『富豪刑事』の上映会も予定されていたのですが、このままではまずいと俺からプロデューサーに話して、中止にしてもらいました。そうしている中で、アニメ自体も時期をずらそうとなりました。

ーー2話で一旦中止になりましたが、その時点でアニメはどのくらいできていたんですか。

実はトラブルで3話を俺が急遽演出することになったことで、2話を終わった時点で全然できてなかったんです(笑)。だから不幸中の幸いでした。

ーー作業自体はいつ再開したんですか。

伊藤:作業自体は実は緊急事態宣言後もずっと続けていて、自粛期間はほぼなかったです。俺は仕事場のスタジオに行ってましたが、自宅作業できる人は自宅作業にしてくださいという感じでした。

 アニプレックスの親会社にあたるソニーにはクリエイター支援制度があって、自宅作業希望者にはリモートの環境を無償で提供してるんですよ。PC、タブレット、ソフト一式。Macが良い人はMacにもできる。50~60万円を普通にもらっているような感じですね。俺はもらえませんでしたが。

ーーアニプレックスは『鬼滅の刃』やスマホゲームで儲かっていますが、そのお金がクリエイターに回っているのならいい話ですね。ほかにコロナで影響を受けた部分はありますか。

伊藤:音響現場はダイレクトに影響受けてます。声は飛沫が飛びますから、よりセンシティブです。音響監督は確かにピリピリしてますが、役者はその時間に来て仕事すれば良いので、年配の役者さんたち以外はそこまで緊張感はなかったように見えました。

 ただ声優さんの話ですけど、コロナ感染対策で同じブースに入れないから、先輩がどういうふうにやってるか全く見れない。先輩の仕事を完全に盗めなくなってます。先輩が音響監督などにどういうディレクションを受けているのかも全く聞けない。また新人のポジションの子たちがブレイクポイントというか、すごいいいなって認められることが限りなくゼロになっていると、とある音響監督の方から聞きました。

ーー伊藤さん自身、逆に困った部分はありますか?

伊藤:コロナ禍で打ち上げが全くできなくなったのが大きいですよ。作品の打ち上げが全く消えた。小規模単位ならまだしも、100人とか集められない。打ち上げをしないと作品が終わった感じがしないという人も多い。

 また、アニメーターってなかなか顔を合わせることがないから、打ち上げが次の仕事に繋がることもあるわけです。俺もちょいちょい顔合わせして、次はこの人を呼ぼうっていうのが結構ある。そういう機会が全く消えてしまっている。

ーーコロナがアニメ業界の新人育成に影響を与えているんですね。コロナは3年くらい続くという話もある。そうするとぽっかり新人教育のある部分がなくなってしまう。

伊藤:絵描きもゴミ捨て場にある先輩の絵を拾ったり、人の机を勝手に見て学ぶということがしょっちゅうあったんですけど、そういう機会が減りつつある。物理的にできなくなっているとは感じますね。なので各分野の人たちが頭を揉ませている。

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