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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 『鬼滅の刃』のプロデュースワークの巧みさ
(前編)

【伊藤智彦監督と振り返る2020年のアニメ業界】『鬼滅の刃』に感じたプロデュースワークの巧みさ

今年はコロナ禍でのアニメブレークから、空前の映画大ヒットまで『鬼滅』がエンタメ界を席巻した。(画像/『鬼滅の刃』ウェブサイトより)

『劇場版ソードアート・オンライン~オーディナル・スケール~』『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』など数々の作品を手掛けた伊藤智彦監督とともに、その年のアニメ業界を振り返るインタビュー企画も、メディアを変えてことしで7年目。『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)よりも流浪の企画となっており、ことしは日刊サイゾーで前後編の2回にわたってお送りする。

 前編はアニメに止まらず2020年最大の話題作といえる『鬼滅の刃』。『千と千尋の神隠し』を超えて歴代興行収入No.1となったモンスターアニメのヒットの理由について、独自の視点で分析した。

『鬼滅の刃』神回に感じたスタッフの一体感

――さっそく2020年のアニメ業界を振り返ってみたいんですが、やはり『鬼滅の刃』の存在は外せません。振り返ってみるとコロナの映画館の入場制限も『鬼滅』上映の頃には解除されていて、私が劇場に見に行った頃は満席でした。

伊藤:ちょうど『鬼滅の刃』公開のタイミングでしたからね。この鬼滅現象でいうと、アニプレックス岩上敦宏社長の強運が理由なのではないかと思います(笑)。

――『鬼滅の刃』は製作委員会方式ではなく、アニプレックス、制作のufotable、そして集英社の3社だけです。その分、配分も大きいわけですから、制作段階からヒットを予感していたんでしょうね。伊藤さんは『鬼滅』ヒットの理由をどこだと感じていますか。

伊藤:クオリティの高いアニメを作ったufotable陣はもちろん、感じたのはアニプレックス高橋祐馬プロデューサーのプロデュースワークの巧さです。テレビ放送されたアニメ第1話でCMを挟まず一気に見せたことや、独占配信するのではなく、ネットフリックス 、アマゾンプライムとどこのサブスクのチャンネルでも見られるようにしている。どこかのサービスに独占させてしまうと、そのサービスの利用者以外は見られないのでブームに乗れない。そこを遅れても見られるよう、時代に合わせたウインドウの選択をしている点が素晴らしいです。

――たしかに、もしひとつのサービスに独占配信させていれば、ここまでの空前のヒットに繋がらなかったかもしれませんね。

伊藤:ヒノカミ神楽が登場するアニメ19話の「ヒノカミ」ですが、内容はもちろん、「この回は良いものにしなければ」というスタッフ全員の統一を感じました。2クールやるのであれば、この話数にピークを持ってこようと一致団結している。そういう場を作れたこともプロデュースワークのうまさとして俺は捉えてます。もちろん、それに応えられる現場あってこそですが。

 『君の名は。』のヒットで二番煎じが増えたように、たぶん『鬼滅』のメガヒットで世の人たちは似たような雰囲気の作品を作ろうと試みると思うんですが、本質的なところはそこじゃないのではないか。内容よりも『鬼滅の刃』を作り上げた座組、システムこそがより重要ではないかと思います。これまでは一人の監督に光が当たっていましたが、ufotableはパッケージとしてブランディングされている。個人的には外崎春雄監督がもうちょっと取り上げられても良いのでは、と思いますが。

――興行収入が『千と千尋の神隠し』をついに超えてしまった中で、作家性の権化である宮崎駿を『鬼滅の刃』が超えるというのは象徴的な出来事と言えますね。

伊藤:ガラパゴスの日本ぽくていいんじゃないですか。個人的には無理に作家性がどうとか言わないのは嬉しい傾向ですが。

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