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『梨泰院クラス』は本当にハッピーエンドか?──共依存関係のセロイとイソ、その未来を憂う

──サブカルを中心に社会問題までを幅広く分析するライター・稲田豊史が、映画、小説、マンガ、アニメなどフィクションをテキストに、超絶難解な乙女心を分析。

『梨泰院クラス』は本当にハッピーエンドか?──共依存関係のセロイとイソ、その未来を憂うの画像1
Netflix『梨泰院クラス』より

 韓国ドラマ『梨泰院クラス』が人気だ。主人公は、巨大飲食チェーン・長家の会長とその息子に父親の事故死をもみ消され、刑務所で服役する羽目になった男、パク・セロイ(パク・ソジュン)。セロイは出所後に小さな居酒屋をオープンさせ、トータル15年もの歳月をかけて壮大な復讐を遂げる。

『梨泰院クラス』は、今まで韓流ドラマに見向きもしなかった日本の中年男性層にも受けがいい。理由は、本作が『ONE PIECE』や『半沢直樹』や『ショーシャンクの空に』や『課長島耕作』など、中年男性大好物コンテンツを彷彿とさせるから(詳細割愛)。そして、Wヒロインのひとりチョ・イソ(キム・ダミ)が、実に完成度の高い文化系中年男性ホイホイだからだ。

 イソはIQ162の超勝ち気・猪突猛進型のソシオパス(反社会的な行動や気質を持つ精神疾患)妹キャラ。セロイがたったひとりで巨大企業に立ち向かう姿に一目惚れし、大学進学を蹴ってまでセロイの店のマネージャーとしてジョインする。

 彼女は韓国社会で気勢を上げるフェミニズム運動(と、それに怨恨じみたアレルギーを示す伝統的保守層からの反発)の落とし子のようなキャラクターだ。全韓国人女性の鬱屈を晴らすかのように颯爽と登場したイソは、偉そうな男性に一切媚びない。賢すぎるゆえに、愚鈍が交じる集団と愛想よく折り合いをつけたりもしない。能力があるにもかかわらず社会で理不尽な扱いを受ける女性の心の代弁者として、社会に全力で反抗する存在として創造された(だからこその社会不適合者≒ソシオパス属性である)。それゆえイソは、旧来型の男性優位主義がはびこる大きな会社組織ではなく、起業したばかりのベンチャーであるセロイの事業にコミットする。

 イソは、働く女性と言えば「お茶汲みOL」がデフォルトだった約30年前の日本に颯爽と登場した『東京ラブストーリー』の赤名リカ(鈴木保奈美)をも彷彿とさせる。リカは仕事にも恋にも奔放で、先進的で、自由闊達で、天真爛漫で、男性が完全に持て余す存在として、社会(のオジサンたち)に中指を突き立て、同性から喝采を浴びた。

 ただしイソが赤名リカと決定的に違うのは、同時代のオジサンたちに中指を突き立てるどころか、同時代の(隣国の)文化系オジサンたちを萌えさせた点にある。“小生意気な賢い妹”属性のイソはセロイに心酔しており、セロイの復讐を実現させるために己の持てる能力をすべて差し出す。セロイが高校時代の同級生・スア(クォン・ナラ)に恋心を抱き続けても、お構いなし。セロイへの好意を剛速球で何年にもわたって投げ続け、絶対に諦めない健気さがある。イソは90年代に美少女系のアニメやマンガや恋愛シミュレーションゲーム等のコンテンツにどっぷりだった日本男子からすれば、ドンズバの理想的存在。高スペック、ツンデレ、童顔、妹属性の押しかけ女房なのだ。

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