嵐が夢見た世界進出と「上を向いて歩こう」の歴史的めぐり合わせ──批評家・矢野利裕が選ぶ“今年のジャニーズソング3曲”
#ジャニーズ #嵐 #NEWS #松井五郎 #馬飼野康二
──2020年は新型コロナウイルスに振り回される一年だったが、それでもエンタメ業界は暗いムードの世間を盛り上げようと奮闘していた。ここではさまざまな分野の識者に、今年特に熱かった作品を総括してもらう。ここでは、批評家の矢野利裕氏にジャニーズのベスト楽曲3曲をあげてもらった。
2020年もまた、ジャニーズにおいては激動の年だったと言わざるを得ません。年明け早々にSixTONESとSnowmanがデビューしたと思ったら、2月あたりには新型コロナウイルスにより世界が一変。特にエンターテイメントの領域は大きな影響があり、ジャニーズにおいても、コンサートが相次いで中止になりました。一方、そんな多くの人が自宅で過ごす時間が増えた状況下、3月末に「Johnny’s World Happy LIVE with YOU」と題したコンサートを無料配信しました。活動休止を宣言した嵐の最後の1年がこのような状況になるとは、予想だにしませんでした。
2020年に「今年のジャニーズソング3選」について書くというのは、このような状況下を見据えながら音楽を聴く、ということを意味します。その意味では、松井五郎が作詞で馬飼野康二が作曲というジャニーズ渾身の手洗いソング「Wash Your Hands」も挙げたくなりますが、ちょっと飛び道具的なのでこうして言及するにとどめておきます。
NEWS、4部作最後の傑作「何度でも」
個人的に衝撃的だったのは、手越祐也のNEWS脱退でした。4人のグループとして結束力も関係性も強くなって、『NEVERLAND』から始まる4部作も完結にいたるそのタイミングで、新型コロナウイルスによるコンサート中止が発表され、そうした動きに続くように手越さんの脱退が発表されました。
このあたりの動きは、見ようによっては非常に現代的です。まずは、新型コロナウイルスの影響の大きさという点。次に、当面テレビ番組に出演するのが難しくなった手越さんが、新たな道としてYouTubeを主戦場のひとつに選んでいるという点です。
同じくテレビを追われたお笑いタレントの宮迫博之のYouTubeに出演して、記者会見の裏側などを話していたのも印象的でした。まあ、手越さんの先見性という評価は別個あるかもしれませんが、ここ数年のNEWSの作品を特に愛好していた筆者としては、手越さんの脱退は端的にショッキングで寂しいものでした。
4部作の最後にあたる『STORY』がとても素晴らしい内容だったのでなおさらです。ということで、そんな『STORY』で一番好きな曲である「何度でも」を挙げたいと思います(「Perfect Lover」も捨てがたい!)。向井太一が作詞作曲を手がけ、Taku Tkahashiも作曲に加わったこの曲は、ネオソウルとまでは言えないけどスロウな隙間のあるR&Bで、さらにコーラスにはゴスペル的なところもあり、とても素晴らしい楽曲です。このような技巧的な曲を歌いこなせるNEWSの表現力はすごいですね。「何度でも/何度でも/僕らなら進んでいける/悲しみや別れまで/笑顔に変えるから」という一節は、いま聴くとあらためて胸に響くものがあります。
アイドルという労働を考えさせられたSexyZone
エンタメ業界の苦心ぶりを見ていると、芸能活動もまた労働の一部なのだという思いを強くします。だとすれば、アイドルのような存在もまた労働者のひとりです。近年注目され、コロナ禍においてますます無視できないのは、メンタルヘルスの問題です。
2020年は、パニック障害のため2018年から活動を休止していたSexyZoneの松島聡が復帰をした年でした。松島さんは、9月の『THE MUSIC DAY』でテレビ復帰を果たし、11月発売のシングル「NOT FOUND」に参加しています。この松島くん復帰作を2曲目として挙げたいと思います。
亀田誠治がアレンジを務めているこの曲は、ピアノとホーンで豪華でアダルトな雰囲気を出しておきつつ、シンセサイザーの味付けを前面に出して現代性も担保した素敵な曲です。菊池風磨によるラップパートも、途中で倍速になるところが素晴らしいです。今年2月のアルバム『POP × STEP!?』もとても良いアルバムですが、SexyZoneはかなり曲に恵まれているような印象を受けます。どの曲も水準が高いです。現在はマリウス葉が休止に入っていますが、早い回復を祈ります。
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