トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 元芸人が「M-1 2020」を徹底分析!

元芸人が「M-1 2020」を徹底分析!マヂラブが見せた2つの“漫才コントの型”

オズワルド伊藤は、大声の出し方の研究があまかった?

 6組目は「マヂカルラブリー」。

 独創的かつクオリティの高いネタで今大会の覇者となった。

 ボケの野田さんがひたすら動き、村上さんが客観的にツッコむというのはマジカルラブリーお馴染みの形だが、決勝で披露した2つのネタは似ているようで違う。

 それはネタの「ブロック分け」があるかないかだ。

 1stRoundは高級レストランのマナーを知りたいというネタで、4つのブロックによって構成されている。各ブロックで違う角度のボケをするという形式だ。

 ほとんどの漫才コント師はこのブロックで分かれている構成を使う。何故なら仕切り直しや場面転換、ボケの被せ(てんどん)が出来るからだ。だがその反面、ブロックとブロックの間で笑いが止まるというデメリットもある。

 2人がそれを知っているのかはわからないが、決勝戦はブロック分けが無いネタで勝負していた。内容は電車のつり革を掴みたくないから踏ん張っているが、結局揺れに負けて動きまくるというネタ。野田さんは終始ノンストップで暴れまくっていた。

 揺れる車内でよろけながらトイレに行ったり、売り子さんのキャラを演じることで仕切り直し部分の代わりとし、最後まで観客を飽きさせず、笑いを起こし続け、自分たちの世界に留まらせた。

 優勝を勝ち取るためにネタを進化させ、取るべくして頂点を勝ち取ったというところだろう。

 ちなみに毎年勃発する話だが、今回も野田さんがほぼ言葉を発していないネタだった為「あれは漫才でなはない」という意見も見受けられた。僕が思うに、審査員であるベテラン漫才師が投票をして王者を決めたのだから、誰が何と言おうと漫才である。そもそも漫才の定義など今はあってないようなものだ。

 7組目は「オズワルド」。

 芸風とキャラクターを踏まえると、優勝から一番遠い位置にいるコンビだと思う。もちろん笑いも取れるし、センスも感じられる。ただ優勝するとなると話は別だ。

 オズワルドのような漫才師の場合、出ることに意味がある。ネタもキャラも被るようなライバルがいないコンビはまさに唯一無二。となるといかに効率的に世間に露出していけるかが売れる為の肝になるのだ。そういう意味では決勝に進出出来ただけでも万々歳である。

 ただ今回のネタを分析し、気になるところを発見した。オズワルドのような雰囲気の漫才師がやるべきことは、圧倒的ワードセンスを見せ続けること。

 今年はそれをアレンジし、ポイントで大声でツッコむスタイルに活路を見出し、実際にそれで芸人発掘番組『マイナビLaughter Night 』の第6回チャンピオンライブで優勝した。ところが『M-1』では、そんなオズワルドが見つけた大きな声でのツッコミ自体に落とし穴があったように思う。

 あのように怒鳴るツッコミは一歩間違えると観客に恐怖を感じさせる。その為、大声のツッコミを使用する芸人は動きや表情、声のコミカルさ、さらには大声を出す為のボケを考える。ツッコミの伊藤さんはまだ大声に対し研究が足りないように思えた。

 オチの手前に「~ずっと口開いてんじゃね~かこのやろうっ!」というセリフがあり、「このやろう」の部分はかなり粗暴で粗雑に声を荒げた。ボケがそこまで怒るほどの内容では無かったので、ボケとツッコミが噛み合わず、声自体もコミカルさより凶暴さが上回っているように感じた。センスの良さを見えづらくしたのは、芸歴の浅さゆえにメンタルが抑制できず、ネタが終盤を迎えテンションが上がり、感情が表面化したのが原因かもしれない。彼らの良さがもっと見たかったというのが今回の感想である。

12345
ページ上部へ戻る

配給映画