元芸人が「M-1 2020」を徹底分析!マヂラブが見せた2つの“漫才コントの型”
#お笑い #芸人 #M-1グランプリ #マヂカルラブリー
ニューヨークは安牌を選んでしまった?
3組目は「ニューヨーク」。
テレビへの露出も増えており、知っている人も多いと思う。漫才中の落ち着いた喋り方、テクニックや安定感、そして間の取り方も抜群である。ただ、ネタの選択が良くなかった。
はじめから終わりまで同じようなテンポで話が進み、6割ほどの笑いがずっと起こっている感覚。別の言い方をすれば”爆発的な笑い”が無い。しかもニューヨークの2人だからこそ6割の笑いが取れていたので、ネタだけ見ると4割程度の笑いといったところだ。後半もっと盛り上がり、爆笑で締めくくる流れが漫才の理想なだけでに、安牌を選んだ結果なのか、残念でしかない。
4組目は「見取り図」。
僕は、1stRoundのネタの方が面白いと思った。
1stRoundの題材はマネージャーとタレントというベタでイメージしやすい設定で、ボケをしばらく放置し時間差でツッコむという見取り図の得意技も入っていたし、言葉ボケと動きのボケのバランス、小ボケの入り具合、後半に向かうにつれ盛り上がる形など全てにおいて素晴らしかったので、この勢いで優勝するのではと思った。
決勝のネタは、1stRoundに比べるとしゃべくり漫才に近いネタを選んでいた。
題材はお互いの出身地を否定するといったわかりやすいものだが、大阪と岡山の情報を聞くというスタンスは1stRoundのネタのように想像しやすいものではなく、観客の想像を超えるようなボケが少なく感じた。もちろん観客は笑っていたし、見取り図らしいネタだったが、1stRoundのように、動きのあるボケを取り入れたネタのほうが笑いの種類が増え、優勝に近づいたのではと、僕は思う。
5組目は「おいでやすこが」。
正直、一番面白いと思った。
ピン芸人の二人からなる異色のコンビ。登場口から階段をおり、マイクの前に立つ二人の姿は、漫才師のそれはとは大きく違っていた。ハの字に立つでも、向き合うように立つでもなく、二人ともまっすぐ客席を見るという不思議な立ち姿に違和感を感じたが、一発目のツッコミを聞いた瞬間、違和感が吹き飛び、爆笑してしまった。
ネタの内容はメジャーな歌かと思いきや知らない歌という、良くある形なのだが、圧倒的な歌唱力と楽曲のセンス、そして何といってもツッコミの激しさが秀逸だ。
僕の持論に、ネタの面白さは声量に比例するというのがある。まさにそれが体現されていた。
ツッコミの声量に注目しがちだが、関西弁ならではの言葉のチョイス、何とも言えない絶妙な表情、イライラを表す所作、どれをとっても完璧だった。関東のお笑いに慣れている僕でも、どストレートな関西弁のツッコミは、鋭く面白く、羨ましいとさえ思えた。
優勝できなかった理由を考えてみると、決勝のネタも似通った構成で、観客は同じようなネタだと慣れてしまい、パワーダウンして見えてしまうからだと思う。
外見が独特で好き嫌いが分かれるが、早めにキャッチーな風貌への転換が出来れば、さらに躍進する事は間違いないだろう。優勝は逃したものの、ツッコミのおいでやす小田さんの何に対してもお構いなしに大声でツッコむ芸風は今後のバラエティーで活躍するに違いない。
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