元芸人が「M-1 2020」を徹底分析!マヂラブが見せた2つの“漫才コントの型”
#お笑い #芸人 #M-1グランプリ #マヂカルラブリー
2020年12月20日、M-1グランプリの決勝戦が開催された。
様々な番組や芸人を元芸人目線で分析するこのコラムを書かせて頂いているが、今回はM-1グランプリ2020決勝戦を元漫才師として分析していく。
僕は芸人をやっていた頃も、芸人を辞めてからも、M-1グランプリに関して公で評したことは一切ない。なので言葉を選ばず忖度せずに思ったことを素直に書くので、気に障る表現があっても大目に見て欲しい。
まずはトップバッターの「インディアンス」。
トップでネタをやるというのは容易ではない。ましてやM-1史上初である敗者復活組がトップバッターを務めるというのは相当な重圧だったはずだ。しかし彼らはしっかりと観客を笑わせ、会場を温め、笑いやすい空気を作った。トップバッターとしては上出来というレベルを遥かに超えていたと思う。
審査員の点数は伸びなかった大きな原因は”順番”もあるが、インディアンスの持ち味でもある、ツッコミのきむさんがセリフをかんだり間違えたときに、ボケの田淵さんが上げ揚げ足をとって暴走していく芸風も理由のひとつだと思う。敗者復活戦を見ていれば、どこまでがネタでどこからがアドリブなのか一目でわかるが、初めて見る人にとっては「噛んだ」「間違えた」と見えてしまい、100%完璧な漫才ではなかった、と勘違いされてしまう。
さらに言うときむさんのツッコミがボケの熱量に負けている。田淵さんが放つボケの数や質はアンタッチャブル山崎さんを彷彿とさせる。底抜けに明るくパワフルなボケに比べ、アンタッチャブル柴田さんのように圧倒的に制するツッコミの技術をきむさんはまだ持っていない。
こういったタイプのボケは頭ごなしに押さえつけ、それでも辞めないという構図に面白味があり笑いが加速していくのだ。最後に付け加えると、きむさんがネタ中のハプニングにアドリブとして反応する為の引き出しを増やし、誘い笑いの技術を磨くことでインディアンスはもっと成長出来るコンビだと僕は思う。
お次は「東京ホテイソン」。
10組の中で一番”流行りにのった漫才”をしている印象を持った。
”流行りにのった漫才”というのは、本来の自分とは別のキャラを作り、そのキャラに漫才をさせるという一種のコントに近い。実際にネタが終わった後のトークでは話し方や雰囲気がまるで別人のようになった。ウケるうちは続けていて良いと思うが、同時進行して、キャラでは無い素の自分でいるときに勝負できる武器を確立させておけば、今後平場でも活躍できると思う。
さてネタの分析だが、漫才が始まると二人は過剰だと思うくらい丁寧にセリフを言い合う。芝居だったら怒られてしまうほどハキハキとゆったり言いまわす。僕はあまりにも不自然過ぎる話し方に一瞬ネタから離脱してしまった。ただ話が進んでいくうちに、この違和感に必然性があると気付き、笑いどころが明確になったので、楽しんで見ることが出来た。
M-1の持ち時間は4分である。時間が限られている賞レースの場合、初速が非常に大切で、いかに早くひと笑い起こし観客の心を掴むかが決定打になってくる。点数が低かったのは一発目の笑いまで少々時間がかかったことが原因だと思う。現在の芸風に二人の本来の面白さがプラスされれば流行り廃りの無い漫才になるのではないだろうか。
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