般若「同業者には反面教師にしてほしい」ドキュメンタリー映画に描かれた一途なラッパーの肖像【インタビュー】
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「“キャリア”ってものには価値がない気がしてる」
――劇中で印象的だったのが、T-Pablowさんの「般若というジャンルにトレンドを入れるのが上手」という言葉でした。
般若 あいつマジで良いこと言うよなぁ~、本当。
――(笑)。実は般若さんをその観点で語る人って少ないような気がするんです。普段は何を聴いているんですか。
般若 日によって違いますね。トレーニング中に聴くのはFrench Montanaと…最近はTAKABOかな。あのくらい振り切れているのは楽しいし、Jin DoggやMachin Gun Kelly、今日は泉谷しげるさん聞いてたな。竹原ピストルさんも聞きますし、夜の高速では小室ファミリーを大熱唱するし、Charaもいいなぁ。椎名林檎、う~ん…超大好き。ほんと聴いてる。あいみょんも好きだよ。
――ただ、影響を受けたアーティストとなると、また違うと思うんですけど。
般若 そこは(長渕)剛さん、THE BLUE HEARTS。
――例えば最近のアーティストから新たな刺激をもらうことはないんでしょうか。般若さんはリリースを追うごとに、音楽的な表現が幅広くなっていると感じるので、どういったものから影響を受けているのか気になります。
般若 あぁ~マンガとかじゃないですか?
――マンガからですか! 例えばどんなものが?
般若 俺は『ジョジョの奇妙な冒険』とか大好きなんですけど、改めて読むと何て幅広いんだろうと。こんなにキャラがいるのに、荒木飛呂彦大先生はまだやるのかっていうのを見ると、俺もこういう観点で描こうとか、ちょいちょい思いつきますね。あと友達と話してて「お、なるほど」みたいなのがありますね。月に1度は落語を聞いたり、お笑いだったり。
――触れるものが他のラッパーさんと違いますね。
般若 今年は釣りにハマったりして、それくらいかな。そんなに趣味ないんで、飲みにも行ってないので。
――制作物であれば誰でも常に観てほしい相手を考えると思いますが、「その男、東京につき」はどんな人に観てほしいでしょうか。
般若 燻っているやつに見てもらいたい。そういう奴に見てもらった方が伝わるんじゃないかなって思うし。
――今や武道館ライブっていろんなラッパーが成し遂げているので、般若さんであれば当然のようにライブを行ったものだろうと、きっと多くの人が思うのではないでしょうか。
般若 でも俺自信、正直「キャリア」ってものには価値がなくなっていくような気がしていて。全然俺のことを知らない人は沢山いるし、使い捨てされることも全然あると思うんだよね。だから、俺よりも周りのスタッフの方が武道館にこだわっているのかなって思いますね。俺としては(公演が)終わったら次のこと考えちゃうんだよな。でも、今は何やっても文句言ってくる奴がいるから。俳優業やっても文句言ってくる奴がいて、映画についても「過去を語るようになったら終わりですね」みたいに言ってくる奴もいる。俺はそんなつもりはないし、面白いなって思うんだけど(笑)。どういう形で伝わるかわからないけど「こいつがやれてるから俺もできるみたい」に思ってくれると嬉しい。
――ひとつひとつを打ち込んでいった結果、ここに行き着くっていうのを見せられている気がしています。次、武道館を成し遂げてほしい後輩やラッパーはいないですか?
般若 名指しで!? 俺はそれはわからないけど、俺よりも年下の同業者がこれを観ることがあったら、反面教師として観てほしいって思っています。
――武道館を達成したのに、反面教師とは?
般若 いやいや、そりゃそうでしょ。例えば俺の良かったところは、確かに真面目にやってるところだと思う。でも真面目が故に衝突してしまうことも多くて、ここまで時間がかかってしまった。だから、なるべく味方は増やしなさいって。
――そういうふうご自身を振り返ってらっしゃるんですね。
般若 俺は結構ドライだぜ。できることとできないこともわかってるつもりだし、やりたいことのために、やりたくねぇこともやらないといけないっていうのは正直ある。けど、自分一人だけじゃなく仲間もいるんなら、お金のこととかで揉める前にはっきりしておいたほうがいいぜっていうことだったりとか。途中でつらくなってやめるっていう選択肢が見えたなら、自分が後悔しないならやめてもいい。まったく後悔しないっていうことはないと思うけどさ。俺はたまたまこうなったけど、人生において「諦めないことが全て」ということでもないと思うし。
――自分も含めて、多くの人は小利口に立ち回って、衝突する前にその場を去ってしまうことが多いと思うんです。だから自分にとっては般若さんのように愚直にも貫ける自分があることに憧れます。どちらが良いかっていうことを話したいわけじゃないんですけど。
般若 わかります。今の子たちは俺たちよりも、はるかに賢いと思いますね。損をするやり方をしない。もっとドライなんだと思いますね。「この人怒った、もう無理付き合えない」って。でもまぁ、何かをやりたいなら、壁にぶつかってもやり続けるしかないとは思うので。
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