般若「同業者には反面教師にしてほしい」ドキュメンタリー映画に描かれた一途なラッパーの肖像【インタビュー】
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般若。その名に恥じぬ気迫とキャリアを積み上げてきたラッパーは、人のマイクを勝手に奪う”カチコミ”で知られた悪名高きラップグループである「妄走族」の切り込み隊長として恐れられ、近年では『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日ほか)のラスボスとして君臨し、ラップ・バトルのブームの象徴になった。鍛え上げられたその肉体と鬼気迫るパフォーマンスは誰もがラッパー般若の名前から連想する姿だが、そのクレイジーなキャラクターの裏にある愚直なまでの真面目さと、日々薄紙を一枚ずつ重ねるような努力はあまり知られていない。
12月25日より上映されるドキュメンタリー映画『その男、東京につき』は、単に般若が初の武道館ワンマン・ライブを成功させる過程だけを映していない。ラッパーになる以前の彼が、どのような苦い経験をしていたのか。般若として活躍する姿を、周りの人間がどのように見ていたのか。多角的な証言と共に、般若自身を映すものであった。ストイックさの奥にある反骨精神。まずはそれを感じさせるシーンについてから切り込んでみたい。
――映画前半で印象的だったのは、般若さんがとある床屋を指差して過去を振り返るシーンでした。過去にあった経験をまるで最近のことのように「悔しい」と繰り返す様子は、久しぶりに見る怖い般若さんでしたし、「悔しい」という感情が根源にある方なんだと思いました。
般若 歪んでるし、クソみたいなやつなんで、やられたことは絶対に忘れないっすよ。
――ラッパーとして挑戦される側になり、背中を見せる立場になった今でも、「悔しさ」という感情が向かう先はあるのでしょうか。
般若 ありますよ。表に出さなくなっただけでめちゃくちゃむかつくし、イライラもするし、こんだけ感情の起伏が激しいのもおかしいんじゃないですかね。でも、俺が本音を言う時は、あくまでも曲の中に落とし込むんで。俺は堅い人間ではないけど、かと言ってSNSでぐちぐちいうタイプでもないんで、曲を聴いてもらって考えを理解してもらえればいい。そうじゃないと、この言い方が正しいかわからないけど、アーティストとして卑怯じゃないですか? アーティストとしてラッパーとして、曲以外のことで目立ってしまうのはよろしくないなって思っていますね。適当に楽しめれば良いんですけど、自分の中には基準がある、かな。
――SNS等の言動が注目されることで、認知される人が増えたのは間違いないと思います。
般若 人の興味を引くような行動は、良くも悪くも目立つじゃないですか。まあでも、それはそれ。中身のない人たちは消えていく。いろいろなやり方があっていいと思うんですけど俺は、曲でちゃんとやっていきたいかなと思ってます。
――般若さんが昔行っていた、他人のライブを乗っ取る”カチコミ”はあまりに有名です。そんな般若さんが今10代の無名MCだとしたら、カチコミしていますか。それとも別の方法を取ってますか。
般若 どうしてたんだろうなぁ……それはよく考えるんですよ。俺は手段や情報がなかった10代だったけど、今は逆ですよね。こんなに情報がある中で、果たして何をやっていたのかな。バトルに出てたのか、とか。何かしらやってたでしょうけど、やっぱり強硬手段を取ったかもしれないですね。
――個人的な感想ですが、今のシーンは強硬手段で乗り込んでいく人が現れる雰囲気ではないのかな、と感じますがいかがですか? 勿論、ラップが刺激的でなくなったという意味ではなく。
般若 うーん、確かにそのテンションではないかなって感じますね。
――それは先程もおっしゃった通り、ヒップホップのシーンが豊かになったからなのでしょうか。般若さんは若いラッパーと接する機会も多いと思うんですけど、どのように見えますか?
般若 やる人口が凄く増えたし、誰とでも繋がれるようになったじゃないですか。だからそれ以上に、切り込む手段がなくなったんじゃないですかね。ビーフとかディスり合いがあっても、ガチじゃなくて炎上みたいな感じで、そういうのが沢山あるのかなって思いますけどね。結果、良い曲が生まれて皆が聞く環境になるならいいんじゃないですかね。
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