「オンラインサロン文学」の選民思想 “本を読めない”客を集めるシステムとは
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オンラインサロンはN国党に似ている!?
では、そもそもどうして人々は、オンラインサロンに引き寄せられてしまうのだろうか? 宗教コミュニティやテロリズムなどを専門とする批評家で『不寛容という不安』などの著書がある真鍋厚氏は、これまで「信者ビジネス」や「搾取ビジネス」などと批判されてきたオンラインサロンを「選民ビジネス」という観点から読み解く。
「オンラインサロンの主催者たちは意見を炎上させ、世間との対立構造をつくることによって注目を集めます。過激な意見によって反発を食らう一方で一部の人は、彼らのことを『意外とまともなことを言っている』と思う。それによって、『私だけがわかっている』『ほかの人はわかっていない』という選民化された意識を芽生えさせ、オンラインサロンに入会するような支援者へと育てていく。
このような感情を非常にうまく活用している例が、立花孝志による『NHKから国民を守る党』です。彼らは、過激な言動や振る舞いで世間から批判を浴びながらも、YouTubeチャンネルを見るとコールセンターを開設して相談に乗るなど、過激なイメージとは異なった地道な活動も展開しています。そうして、視聴者の一部は『N国党は、周囲から誤解されているだけではないか』『自分は彼らの本質をわかっている』と考えるようになっていくんです」
セクハラ・暴言スキャンダルを経て箕輪編集室では、数百人単位のメンバーを減らしており、現在のメンバー数は非公開。しかし、その動きは以前よりも活発化しているという。
「現在、外での活動を自粛しているために、箕輪氏の精力は前以上にサロンに注がれています。日々さまざまな投稿がなされ、先日は別荘でくつろぐ様子も投稿していた。
地方で退屈している若者にとっては、部活のようにわいわいつながれるオンラインサロンは潤いの場として機能しています。彼らにとって、そこは誰かとつながりたいという根源的な欲求を満たしてくれるコミュニティなんです」(A氏)
人々の根源的な欲求を満たすことによって、ブームから定着のフェーズへと移行しつつあるオンラインサロン。では、今後はどのように発展していくのだろうか? 前出・久保内氏は次のように予測する。
「今後はマインドに訴えるのでなく、具体的な利益があるオンラインサロンが伸びていくと思います。ファッションバイヤーのMBによるオンラインサロン『MB LABO』は、MBや会員とのコミュニケーションのほかに、ファミリーセールに参加できたり、MBと懇意のブランドの服を割引価格で購入することができる。ファッション好きならば、入会しているだけで具体的なメリットがある。そのような、実利を与えるサロンなども増えていくでしょうね」
一方A氏は、より専門性が高く、小規模である代わりに高額なサロンが普及していくのではないかと予想。さらに、サロン文学の位置付けが変わってくるのではないかと考えている。
「これまで、サロン文学は本の権威性を利用しながらオンラインサロンに誘導してきました。しかし、20代前半以下の若い年代は、本への権威性を感じていない。書籍よりも、YouTubeなどでの誘導のほうが効果的になるのではないでしょうか」
NPからも見限られ、チラシとしての役割もYouTubeに奪われる……。このまま、サロン文学は没落してゆく運命にあるのかもしれない。
(文/萩原雄太)
※「月刊サイゾー」9月号より転載。関連記事は「サイゾーpremium」でお読みいただけます
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