『女帝 小池百合子』はフェミニズム的にやや古い? オジさんに媚びを売って成り上がる女性像
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周りの女を敵にしないと生き残れなかった世代
本書はそうした物語に彩られた400ページ以上の大作となっているが、『メディア文化とジェンダーの政治学 第三波フェミニズムの視点から』(世界思想社)の著者で大妻女子大学文学部の田中東子教授は、こう話す。
「『女帝』を読んで、男女問わず小池さんのような人は多くいると思いました。強い者にすり寄り、弱い者を踏みにじり、話を盛って仕事を得る。成り上がった人の多くは、このくらいのことはしているでしょう。たまたま小池さんが都知事というポジションに就き、しかも女性なので目につくだけ。女性だから商品になっているのであって、男性だったらよくいる政治家タイプだし、会社にだっている。ただ、“周りの女はみんな敵”とする小池さんの生き方は、紅一点しか許されなかった世代の女性特有。そうしないと生き残れなかった。今は、女性同士連帯していくほうが生き延びられる社会になっている。そういう意味で『女帝』で描かれた小池さんの生きざまは、古い女性像といえます」
『日本のポストフェミニズム 「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店)の著者であり、名古屋市立大学人間文化研究科の菊地夏野准教授は、小池氏というより著者の「ジェンダー観が単純では」と指摘する。
「本全体に男社会を批判するメッセージが通底していますが、そのとらえ方が『男性は悪く、女性はよい』という、旧来的なフェミニストの考え方と同一化しています」(菊地氏)
確かに、先に引用した「小池さんは女の皮はかぶっているけれども、中身は男性だと思う」という田嶋氏の発言自体、男女が対立するものとして存在することが前提となっている。
「これだと古いジェンダー観、フェミニズム観を再生産しており、実際の小池さん的なものには太刀打ちできないのではないでしょうか」(同)
前出・稲田氏も、小池氏の生き方自体から男性社会への批判や恨みは感じられないと述べる。
「小池さんは、男性がいなければ自分が都合よくは生きられないとわかっているように思います。男性優位的な世界観がプレインストールされていて、そこをひっくり返そうとするのではなく、その上でどのように生きていけるか考えている。お父さんの影響が大きいのでしょう。一方で、女性蔑視に対する反発が社会で大きな勢力になっているのもわかっているから、その論調も利用する。だから、石原さんに『厚化粧』と言われたときは、あたかも『女性全体に対する侮辱』と言わんばかりにアザのことを持ち出し、結果的に同情を集めましたが、内心、『おいしいエサを投げてくれた』としか思っていないのかもしれません」(稲田氏)
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