『チコちゃんに叱られる！』岡村隆史の“汗だく”収録にスタイリスト「何かある」

特許料をとるエジソンと受信料をとるNHK

　この日2つ目のテーマは「なんでハリウッドは映画の聖地なの？」。天候が安定していて撮影しやすいからでは？　と思いきや、チコちゃんが発表した正解は「エジソンにお金を払いたくなかったから」だった。

　“発明王”エジソンは映画の誕生に大きく関わっている。1891年に彼は映画鑑賞装置「キネトスコープ」を発明。これは、覗き穴を覗くと映像が見える1人用の映画鑑賞箱だ。この装置で映像が見られるキネトスコープパーラーという施設がアメリカで流行した。同じ頃、1895年のパリではリュミエール兄弟によって大きなスクリーンに投影する映画が初めて上映され、その4カ月後にアメリカでもエジソンがヴァイタスコープという映写装置を開発。これをきっかけに、たくさんの映画会社が設立された。映画は人々の新たな娯楽となり、次々と生まれた映画会社は多くの作品を生み出し始めた。この頃、アメリカの映画は主にニューヨークを中心に発展していた。

　しかし、ここである問題が……。ここで始まったのは「NHKたぶんこうだったんじゃないか劇場」である。オープニングのBGMは「20世紀FOXファンファーレ」だ。舞台は1890年代で、弱小映画会社の監督役は厚切りジェイソン、エジソン役はモーリー・ロバートソンだ。また、モーリーの容姿が意外にエジソンと似ているのだ。いや、容姿だけでなく芝居もハイテンションの熱演っぷり。そういえば、彼は来年の大河ドラマ『青天を衝け』で日本に開国を迫るペリーを演じるそうだ。

「映画がすごい人気だって？　私が発明したキャメラと映写機で作った映画が!?　……ひらめいた！　そうだ、特許料をもらおう」（エジソン）

　意外とセコいエジソン。「カメラと映写機で映画を作る者からは特許料をとる！」と鼻息を荒くする態度は、テレビを買った者から無条件に受信料を徴収しようとするどこかのテレビ局に似ている……。

　エジソンを無視することのできない大手の映画会社、配給会社など10社は折り合いを付けるため、「MPPC（Ｍotion Picture Patents Company）」という映画特許会社を設立した。ここに加盟した映画会社には手数料を払ってもらう代わりに特許料を免除してカメラやフィルムを自由に使わせ、MPPCに加盟していない映画会社には映画を撮影するための機材を使用する度にいちいち多額の特許料を要求したのだ。さらに、特許料を払わない映画会社にはスパイや探偵まで使って嫌がらせ（カメラやスタジオセットを壊した）をしたらしい。今回、そのMPPC関係者を演じたのはチャド・マレーンだった。いや、彼はオーストラリア人なのだけど……。何にせよ、外国人が全員日本語で芝居している状況がカオスだ。

　というわけで、エジソンに多額のお金を払わないと映画が作れない状況に陥ったニューヨーク。そこで、映画が作りたい映画会社はエジソンやMPPCの目の届かない遠い場所で撮影を続けることを決意する。最終的に行き着いた場所は西海岸のカルフォルニア、今のハリウッドと呼ばれている場所だ。行ってみるとハリウッドは天候が良く照明いらずで、砂漠や高い山など撮影場所も豊富。さらに安い賃金でスタッフを雇用できるなど、映画の製作にとっていいことずくめだった。こうして1911年、ハリウッドにネスター・スタジオという本格的な映画スタジオが建てられた。当時のハリウッドは地価が安かったため、15もの映画スタジオが次々と建てられていったのだ。そうか、「西海岸の田舎に行けばバレないだろ」という発想で行き着いたのがハリウッドだったのか……！

　やがて、この噂はエジソンの耳に届いた。しかし1910年代には各地に次々と映画館や映画会社が生まれ、MPPCによる訴訟や妨害行為は追い付かなくなっていた。エジソンも引き際だと思ったか、1918年にMPPCは解体された。MPPCの支配力がなくなったアメリカ映画産業はさらに成長していった。そしてハリウッドは世界最大の映画産業の地として、いつしか「映画の聖地」と呼ばれるようになったのだ。