“平和憲法”制定の舞台裏を描いた『日本独立』 浅野忠信が白洲次郎、小林薫が吉田茂外相に
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問題を先送りにした吉田茂の判断
マッカーサーに逆らうのは不可能なことを、外交に通じている吉田茂も白洲も分かっていた。GHQの草案は飲まざるを得ないと。しかし、GHQによる占領が終われば、新憲法が矛盾を生じることも明らかだった。GHQに少しでも食い下がろうとする白洲に対し、24歳年上の政治家である吉田茂は諦観していた。
「GHQに早く出ていってもらい、まずは日本が独立を果たすことだ。それから憲法を変えることができる」
問題を先送りにした吉田茂の判断が、戦後の日本の進む道を決めることになる。GHQ撤退後も米国の庇護下にある日本は、本当の独立国だと言えるのか。新憲法がはらむ矛盾点は、昭和・平成が終わり、令和になった現在まで持ち越されたままだ。
マッカーサーが新憲法の制定を急がせたのには理由があった。じっくりと議論していては、米国が主体となっている日本の占領政策にソ連が口出しをしかねないからだった。GHQは新憲法案の即決採用を強く求めた。白洲は新憲法草案の翻訳作業、擦り合わせに奔走することになる。
梶芽衣子主演の「女囚さそり」シリーズを1970年代にヒットさせた伊藤俊也監督は、その後は実在の児童誘拐事件を題材にした『誘拐報道』(82)、3億円強奪事件の真相に迫った『ロストクライム 閃光』(10)など、骨太な作品を手掛けてきた。『犬神の悪霊』(77)は日本古来の土着信仰と原子力問題とを絡めたカルトなホラー映画として知られている。日本社会を裏側から見つめてきた映画監督だ。
極東軍事裁判(東京裁判)を描いた『プライド・運命の瞬間』(98)は、A級戦犯として処刑された東條英機を主人公にしたことで賛否を呼んだ。伊藤監督いわく「戦後の日本を規定した二大事件」である東京裁判と日本国憲法の制定を、これで映画化したことになる。戦後の日本がどんな道を歩んできたのかを、終戦時8歳だった伊藤監督は映画を撮ることによって検証してみせている。次の世代に託す、という想いもあるに違いない。
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