“平和憲法”制定の舞台裏を描いた『日本独立』 浅野忠信が白洲次郎、小林薫が吉田茂外相に
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「ギャラップ社の調査によると、米国民の70%は天皇の死刑または厳刑に処することを望んでいる。さらに33%は日本国家の消滅を支持している」
トルーマン大統領のもとで国務長官を務めたジェームズ・F・バーンズの辛辣な言葉が、映画の序盤で語られる。伊藤俊也監督の新作映画『日本独立』は、敗戦後の日本がGHQによって占領されていた時代を再現した実録ドラマだ。吉田茂外相を小林薫、吉田茂の片腕として活躍した白洲次郎を浅野忠信、次郎の妻・正子に宮沢りえという実力派キャストを配役することで、先行きの見えない混迷さを極めた時代を上映時間127分の中で描いている。
1937年生まれの大ベテラン・伊藤俊也監督は、日本国憲法の成立を本作のメインに据えている。GHQ(連合国軍最高司令部)のダグラス・マッカーサー元帥は、従順な日本人を統治するには、天皇制をうまく利用することだと考えていた。昭和天皇の戦争責任を追及しないことで、日本の占領政策をスムーズに進めようとする。戦争に勝利しても統治に失敗すれば、米国での立場を失いかねないので、マッカーサーも慎重だった。昭和天皇の人間宣言と同時に、マッカーサーは新憲法の制定を急がせる。
新憲法の制定をめぐり、GHQと吉田茂外相(小林薫)ら日本政府との駆け引きが繰り広げられる。GHQとの交渉役には、英国留学を経験している元ビジネスマンの白洲次郎(浅野忠信)が選ばれた。吉田茂は駐英大使の頃から、白洲とその妻・正子(宮沢りえ)と懇意にしていた。白洲はミルクマン(牛乳配達人)と自称し、GHQに通い詰める。「日本は戦争には負けたが、奴隷になったわけではない」と卑屈さを感じさせない白洲は、米国との交渉役に適任だった。
新憲法の柱となるのは、日本の民主化と軍事力の撤廃だ。マッカーサーは、新憲法はあくまでも日本側が自主的に作ったことにしたかった。松本烝治国務大臣(柄本明)が中心となって新憲法の試案が検討されるが、明治憲法をベースにした松本試案はGHQによって却下される。逆にGHQが極秘に準備した草案を押し付けられることになる。
わずか1週間でGHQがまとめたこの草案が、現行の日本国憲法の原形だ。天皇は象徴とし、戦争は放棄するという画期的な内容だった。このGHQ案に対し、松本国務大臣は徹底的に反論する。「自衛権を持たない国は、独立国とは呼べない」というのが松本国務大臣の主張だった。まっとうな正論だった。
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