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『鬼滅の刃』が売れまくり!?

漢字ドリルにレシピ…etc. コロナ禍でも売れる本! “密”状態の街の本屋と休業大型店の現状

コロナが追い風となって緊急事態宣言でも売れた本

 コロナ期間中に売れた本のジャンルとしては、休校の影響などで伸びたと前述した、学参や児童書、コミックスなどだ。全体的に売り上げが伸びたコミックスの中でもコロナ禍の最中に大きな話題となり、牽引役となったのが『鬼滅の刃』(集英社)である。

「鬼滅の新刊は『ワンピース』(集英社)の2.5倍くらいの勢いの売れ方をするため、もはや鬼滅の単行本は現金にしか見えなかったです。6月に入ってからは、全巻並べられなかったときよりは落ち着いたとはいえ、いまだに老若男女に売れています。また、学参と児童書はご多分に漏れず、うちの店舗でも非常に好調で、特に『うんこドリル』や『すみっコぐらし学習ドリル』(主婦と生活社)は、仕入れたら仕入れただけ売れる状態でした。ほかには、料理本も好調ですね。例えば、料理研究家・はらぺこグリズリーの『世界一美味しい手抜きごはん』(KADOKAWA)や、同じく料理研究家で“バズレシピ”でおなじみのリュウジの『1人分のレンジ飯革命』(KADOKAWA)など、自炊で簡単にできるレシピ本が売れていました」(前出・書店員)

 前年比の売り上げを上回ったジャンルでは、資格やパソコン系のスキルアップ関連本も挙げられ、文庫・新書もオーソドックスな人気タイトルがまんべんなく売れたという。

「学参に関しては10年ぶりの教育指導要領の大改訂に加えて、やはり3月からの休校に伴って、家庭学習用のドリルなどが予想外によく売れました。7月現在もまだ売れているようで、今年の学参は非常に好調でしょう。コロナ禍の影響が大きくなったのが4月だったため、新しい教育指導要領に準拠した商品の生産が遅れたわけでもなかったですし、需要の時期で多少ズレが生じたとしてもトータルではプラスになります。また、児童書に関しては、もともと世界的に好調な成長分野ではあるのですが、今回のコロナ禍がさらなる追い風になりました。海外では巣ごもり需要で、特に創作童話などの読み物がかなり売れたようですね」(前出・星野氏)

 一方でコロナ禍の影響が大きくマイナスに働いたジャンルが雑誌だ。

「4~5月の雑誌では、テレビ情報誌とパズル誌が目立って売れていましたね。ほぼ全タイトル売り切れという感じで。通常だと、ご年配のお客様が買うんですけど、今回は年齢層を問わず、若い人にも買われていました」という、前年比超えでなんでも売れた前出の書店員の証言もあるが、4月にはほとんどの雑誌で通常の編集業務や取材が困難になった。

 例えば大手出版社の集英社ではファッション誌「MORE」や「non-no」のほか、編集部員の男性に新型コロナウイルス感染が確認された「週刊少年ジャンプ」など9誌、光文社はファッション誌「STORY」や「VERY」、美容雑誌「美ST」などで1号分の発売を見送り、合併号に切り替えた。さらに、付録の製造元がある中国からの物流が停止したことで刊行を遅らせた雑誌や、撮影などで直接的な支障が出てしまった雑誌もある。その結果、現場での働き方も大きく変わったと、とある週刊誌の記者は語る。

「弁護士など識者取材ではZoomでの取材が増えたのに加え、そもそもの取材の数自体もだいぶ減りました。直撃取材については、うちの編集部はコロナ期間中は『やらない』という方針になったので、とりあえず現場の写真だけ撮って、その後、事務所にファックスを送って当てるような形が多かったですね。あと、普段なら絶対出てくれないような芸能人も、インタビュー企画などに応じるようになってくれましたね。そんなに高いギャラは出せないんですけど、芸能人もテレビの仕事がなくて暇だし、背に腹は代えられないという感じなのでしょう。事件記事はネタを拾ってこないといけないから大変ですけど、誌面全体として企画ページが増えたので、ずいぶん楽に仕事ができていた印象ですね」

 ちなみに、そんな同氏がコロナ禍でも追っていた事件というのが、幻冬舎の名物編集者・箕輪厚介のセクハラ騒動とのこと。

「箕輪さんがセクハラした人はもっといると思って、『週刊文春』(文藝春秋)の報道の後にちょっと追って、オンラインサロンの箕輪編集室の人を3人くらい当たって話を聞いたんですけど、信者だったので手ごたえなかったです……。時間もなかったので記事にはできませんでしたが、文春の第2弾の報道後は彼もすっかりおとなしくなりましたよね。彼が編集したという堀江貴文の『東京改造計画』(幻冬舎)も、都知事選に出る、出ないみたいな芝居までしたのに、思ったほど売れていないし、相当厳しいですよ」(同)

街が死んでるほうがいい? 本を買え、街へ出るな!

 制作・流通・販売とコロナ禍で翻弄された上半期の出版業界を見てきたが、第2波、第3波も懸念される下半期はどうなっていくのだろうか?

「一時休業した大型店では、今後同じような緊急事態宣言のような状況になると、いよいよ経営的に厳しく、撤退せざるを得ない店舗が現れる状況も可能性はあるでしょう。本当はネット配達などECをやるべきだと思いますが、しっかり先行投資をしてきたECにお客さんを誘引しているアメリカやドイツの書店や取次に比べ、日本の書店はそこまで徹底されていないのが少し残念ですね。一応、仕組みはありますけど、日本は書店も取次も少し意識が弱かった気はします。休業した有隣堂もネット対応を考えたそうですが、人手などの問題で結局できなかった。最近は減っていますけど、もともと地方の本屋さんとかは、外商といって週刊誌などを配達していましたよね。今後の状況次第では外商ルートやECに活路を見出すことを考える関係者も少なくないでしょう」(前出・星野氏)

 また、前出の書店員によれば、競合店が営業再開した6月以降も前年比105~110%の水準で推移しているらしく、天気予報とコロナの新規感染者数をチェックするのが毎日の日課になっているという。

「前年比70~80%くらいにしか戻っていないという大型店の話もあり、やはり人の流れ自体が変わってしまったというのは確かだと思います。少なくとも今のところは“街に人が出なくなるほど、書店のお客さんが増える”という図式は、十分成り立つかなという印象を受けます。現在の売り上げがどこまで続くか見極めながら、4~5月の経験を仕入れや人員体制の整備などの対策に活かし、第2波、第3波に備えていきたいです」

 まだまだ、コロナに出版業界は振り回されそうだ。

(文/伊藤綾)

斜陽産業でも前年と比べるとプラス成長
[2020年上半期の出版市場規模]
7945億円

「出版月報」(出版科学研究所)の7月号によると、今年の上半期の紙と電子を合わせた出版市場(推定販売金額)は、前年同期比2.6%増の7945億円でプラス成長となった。ただし、書籍や雑誌などの紙の出版物だけを見ると、多くの書店の休業や発売延期が影響してか、推定販売金額は同2.9%減の6183億円。一方で市場全体が好調な要因はやはり電子によるもので、電子版の推定販売金額は同28.4%増の1762億円と大幅に拡大した。

日本に限らず世界中で売れた「感染文学」
[『ペスト』の累計発行部数]
160万部

コロナで伝染病そのものが注目された結果、世界中でフランスのノーベル文学賞作家であるアルベール・カミュが1947年に発表した長編小説『ペスト』(新潮社)がベストセラーになっている。日本でも書店からの注文が増え続け、平均で年に5000部増刷される程度だった同作が、2月以降だけで36万4000部も増刷し、6月には累計発行部数は160万部(旧版、新版、電子版含む)になったという。ちなみに、『デカメロン』は特に売れてはいないらしい。

引き伸ばしも続編もなくきれいに完結
[『鬼滅の刃』のシリーズ累計発行部数]
8000万部

5月18日の「週刊少年ジャンプ」(集英社)で、最終回を迎えた『鬼滅の刃』。巣ごもり需要で巻数の多いマンガが購入されやすいこともあってか、シリーズ累計発行部数が2月発売の19巻時点で4000万部突破、5月発売の20巻時点で6000万部突破と発表されていた同作も、7月3日発売の単行本21巻をもって、ついには8000万部(電子版含む)を突破。さらに、最新刊は初版300万部で、書店は陳列するだけで売れたという。

コロナ禍でも文春砲は止まらない
[一番売れた「週刊文春」の実売部数]
41万9265部

毎年下がり続けている雑誌の売り上げだが、そんな中でも「週刊文春」は大きな存在感を見せつけている。7月1日、文藝春秋は同誌の2020年上半期の実売部数が、前年同期比104.4%となったことを発表。もっとも売れたのはアンジャッシュ渡部の不倫疑惑を取り上げた6月18日号だった。また、月別の実売部数では、多くの書店が休業した4月期も前年同期比100.4%、5月期が同111.2%、6月期が同112.9%と推移したという。

※「月刊サイゾー」9月号より転載(関連記事はサイゾーpremiumからお読みいただけます)

最終更新:2020/12/18 16:00
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