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エナジードリンクの戦略と安全性を考える! 栄養ドリンクとして売れないから10代をターゲットにした?

カフェインは危険だけどエナドリにハマる子ども

エナジードリンクの戦略と安全性を考える! 栄養ドリンクとして売れないから10代をターゲットにした?の画像2
千葉県で開催されていたレッドブルのエアレース。(写真/Getty Images)

 この事実について、17年に全国の小中高など1096人の養護教諭にアンケートを実施した、ジャーナリストの秋山千佳氏に話を聞いた。

 もともと、秋山氏は貧困や虐待など現代の子どもが抱える困難を探るため、主に公立中学校の保健室の取材をしていたが、その最中「エナドリにハマる子ども」の存在が目につくようになったという。

「15年に、東京のある中学校で『エナドリを飲んで具合が悪くなる子どもがいる』という話を初めて聞きました。そのときは、それほど大きな問題として捉えていませんでしたが、その後もいろんな学校で同じ話を聞くようになり、アンケートを実施することにしたのです」

 アンケートの結果、「自分の学校に、エナドリを習慣的に飲んでいる子どもがいる」と答えたのは、中学で24.4%、高校では48.4%だった。高校ではおよそ2校に1校の割合である。これらの子どもたちの中には、1日1本程度かと思いきや2~3本飲んでいる子どもたちもいるという。

「コンビニや自販機で清涼飲料水として売られているので、子どもたちからすればそんな危険性のあるものが普通に売られているはずがない、と簡単に手を伸ばしてしまうようです。親が勧めているようなケースもあるので、深刻な問題だと思います」(同)

 小遣いも少ないであろう子どもが、普通のジュースよりも割高なエナドリに夢中になってしまう原因は、カフェインにあるといわれている。

「カフェインは飲み続けると耐性がついてしまうので、なかなか効き目が実感できなくなっていきます。そのため、最初の体験からクセになっていくという子もいます」(同)

 秋山氏がアンケートを実施したのは3年前だが、冒頭で紹介したように3年前と比べて、エナドリの市場規模は拡大している。17年の調査以降も、子どもの間でもエナドリの消費量は増えているのだろうか?

「少なくとも減ってはいません。かつて、モンスターエナジーとレッドブルに書面で『若者がこれほど飲んでいる現状をどう思うか?』と問い合わせたところ、モンスターエナジーからは『飲んでいる未成年の割合はごくわずか』というような返答がきました。ただ、実際に取材を通じて『ごくわずか』ではないということは実感してきましたし、アンケートの結果で実証されたデータもあります。アンケートを実施した後も保健室への取材は続けているのですが、同じような問題は起き続けています。それどころか、最近はエナドリで効き目を実感した子が、それをきっかけにカフェインへの依存度を強め、カフェイン錠剤へ移行するというような事例も起きています」(同)

 このような状況に陥った原因としては、大人たちの危機意識の薄さが“一番の問題”だという。

「前述したように親が勧める場合もありますし、スポーツ少年団で大人が小学生に勧めている事例もありました。また、17年の時点では学校の自販機でエナドリが販売されていた例もあります。そのため、メーカーが未成年に向けて売っていないというのは少しおかしな話ではないでしょうか。大人の意識が変わらないと、子どもたちを守れないと思います」(同)

 こうした事態を受けて、最近はエナドリを撤去する学校も増えてきているという。それでは、エナドリの危険性に対する啓蒙が進んでいるのだろうか?

「学校によって認識にばらつきがあります。教員が危機感を抱いている学校ではポスターなどで啓蒙活動が行われていますが、いくら飲み過ぎは危険だといっても、生徒側は『じゃあ、なんで市販されているんですか?』と反論してきます。取材に行った進学校でも、結局注意されてもエナドリをやめないという事例がありました。そのため、教員の努力だけでは事態を好転させることは難しいのでしょう。一番望ましいのは、イギリスのように子どもへの販売へ規制をかけるなど、そういった方向を考えなければいけないと思います」(同)

 依存性の高さ、危機感の薄さ、そして極めつけの「危険なのに、なぜ市販されているんですか」――活況の裏でエナドリ業界が抱える諸問題は、ストロング系缶チューハイのそれに通じるものを感じる。

 海外ではエナドリを、さらに依存性の高い物質への入口となる「ゲートウェイドラッグ」と定義している国もある。そして、カフェイン錠剤の服用など、それを証明するような事例が実際に起き始めている以上、いずれは法規制の動きも出てくるかもしれない。

 エナドリを飲んでエナジーを吸い取られるような本末転倒の結果を生み出さないためにも、社会全体で負の側面に目を向ける取り組みが必要ではないだろうか。
(文/ゼロ次郎)

※「月刊サイゾー」11月号より転載(関連記事はサイゾーpremiumからお読みいただけます)

最終更新:2020/12/17 15:00
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