「未来の自分とワリカン」あと払いサービス“Paidy”は支払い能力の低い消費者層への甘い罠か
#キャッシュレス
「未来の自分とワリカンしよう」
今年10月、Paidyはこんなキャッチーなコピーとともに、分割手数料なしで「3回払い」が可能な新サービス「3回あと払い」の提供開始を発表した。本人確認と利用上限金額設定機能を備えた「Paidy プラス」向けの機能で、同社によれば「3回以上の分割払いにおいて、恒常的に分割手数料の徴収がないサービスの提供は日本国内初」だという。
同社のプレスリリースでは、さらにこんなポジティブなメッセージが並んでいる。
「『3回あと払い』を通じて、皆様の夢や希望の実現をサポートします。オンラインショッピングがより身近になる中、今だからこそ挑戦したい楽器、テレワークを快適にする家具家電なども、多くのECサイトで利用できる『あと払い』サービスPaidyなら、すぐに無理なく手に入れていただくことが可能です」
年末年始を目前にした、絶妙なタイミングでのサービス開始だ。コロナ禍で家で過ごす時間が長くなり、ホームパーティーも増えるだろう。となれば、鍋やたこ焼き器など生活用品の購入を考える人が増えるはずだ。季節柄、暖房器具を探す人もいるかもしれない。ファッションでも、夏に比べてコートやダウンジャケットなど冬のアイテムは高額になりがちだ。なにかと出費の増えるこの時期、「3回あと払い」はおサイフの負担が減る便利なサービスに見える。なんといっても、クレジットカードで3回払いにすれば手数料がかかるが、Paidyなら手数料ナシなのだから!
そもそも「Paidy(ペイディー)」という名前を初めて聞く人もいるだろう。Paidyはこれまで、オンラインショッピングで利用できる「Paidy翌月払い」を主力サービスとしてきた。「Paidy翌月払い」とは、クレジットカードのように、その場で決済して支払いは翌月にまとめるというもの。最大の特徴は、事前の会員登録やクレジットカードへの紐付けは不要で、携帯電話の番号とメールアドレスを入力すれば決済できること。翌月、前月に利用した分の合計金額(請求額)がメールで通知され、コンビニエンスストアや銀行で支払う仕組みだ。
Paidyは、クレジットカードを持たない人や、オンライン上でクレジットカード番号を入力することに抵抗がある人を主なターゲットとして、2014年のサービス開始以来、順調に利用者数を伸ばしてきた。今年10月22日付の同社のプレスリリースによれば、延べ2000万回以上利用され、金額にして1000億円以上をサポートし、登録アカウント数は400万を超えている。加盟店は70万店舗以上、2019年にはビックカメラ、ヤマダウェブコム、Amazonと大手ショッピングサイトでも採用された。ホームページを見てみると、サマンサタバサやEDWIN、ピーチ・ジョンなどのオンラインショップでも利用できることがわかる。
だが、流通やマーケティングに詳しい専門家は、「このサービス、そのうち破綻するのではないだろうか」と懸念している。
「クレジットカードを持たない理由は人それぞれだけど、その中には与信審査に通りにくい人が含まれていることも確か。そういった、クレジットカードを“持てない”人たちがこのサービスを利用した場合、後から未払い問題が発生することは十分に考えられる」
こう指摘したうえで、さらに続ける。
「クレジットカードや代引きなど決済方法は多様化していて、その場ですぐに支払いができる層にしてみればこのサービスを利用するメリットは特にない。クレジットカードの使いすぎが心配な人でも、今ではその場で口座からダイレクトに引き落とされるデビットカードを作り、それをクレジットカード代わりに使っている人もいる。となれば、ますます、このサービスには後から払えなくなってしまう可能性の高い人の利用が集中することが予想され、とても危ういサービスという印象を受ける」
Paidyとは、私たちの買物体験をより豊かにしてくれるサービスなのか。それとも、消費者金融のごとく「ご利用は計画的に」と自己責任を求められつつ、気づかぬうちに使い過ぎの沼にはまってゆく危険なサービスなのか。ここではそれを検証していきたい。
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