井筒和幸監督の新作で松本利夫(EXILE)が「人格崩壊寸前」の熱演! アウトロー映画『無頼』が描く、戦後の成長と歪み
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松本利夫が人格崩壊する寸前だった撮影現場
──松本さんはEXILEのÜSA、MAKIDAIとの共著『キズナ』(幻冬舎)の中で、「自信はダンスの最高の技術」と述べています。演技をする上でも「自信」はやはり重要?
松本 そうでしょうね。ダンスは肉体だけで表現するものですが、踊りの中に自分の内面も滲み出てくるものなんです。同じダンスを踊っていても、自分に自信を持っている奴のほうが輝くんです。やっぱり、演技でも自分の内面に抱えているものは出てくると思いますね。
井筒 まっちゃんを初めて見たのは、EXILEのステージ。『黄金を抱いて翔べ』の撮影が終わった頃に、招待されて観たんです。そのときにスタッフから「ダンスの他に演技もやってるんで」とプロフィールを渡された。マツは「昭和の顔」をしているから、いつか何かでと思ったんだよ。昭和顔って、今の芸能界にはほとんどいなくなってしまったから。それで『無頼』を撮ることになり、マツのことを思い出した。
松本 井筒監督に覚えてもらっていたことが、すごくうれしかったです。
井筒 最近の売れっ子俳優は、みんなCMに出てるでしょ。シノギのために。それで「ヤクザ映画に出たら、広告代理店から何か言われるから」とか必ず言ってくるわけですよ。そんな理由で断られるのが鬱陶しいから、そもそもそういう俳優には頼まなかった。マツはEXILEという擬似ファミリーで生きてきたこともあって、今回の主人公の心意気が分かるだろうなと思った。
──井筒監督の期待に応えるように、劇中では坊主刈りも全裸姿も見せています。
松本 刑務所のシーンでは頭を刈りましたし、夜中の12時ごろにホテルに入って、背中に刺青のペインティングを入れてもらったんです。7時間かけて描いてもらい、朝7時から撮影が始まり、その日の夜12時くらいまで撮影が続きました。そんな日が5日間くらいありましたね。
井筒 刺青がちょっとしか見えないシーンでも、夜中から準備してもらった。悪いけど、俺は寝てました(笑)。
松本 刺青していると気分が高揚してくるんで平気でした(笑)。でも、刑務所に入所するシーンは、7時間かけて刺青して、朝一番で頭を丸めて、それから全裸になって、刑務官に対してお尻の穴までさらすという……。さすがに、あの日は「俺は何をしているんだろう?」と人格崩壊しそうになりました(笑)。
井筒 ハハハ、それは悪かったなぁ。
松本 いやいや、面白い体験をさせていただきました(笑)。
井筒 マツが刑務所から出てくるシーン、実際に子分役のみんなは泣いてたよな。自然に涙ぐんでいた。あれには驚いた。マツを中心に現場に一体感ができたなぁと実感したよ。
これからのエンタメ界の在り方は?
──最後の質問です。これからのエンタメ界の在り方について、どう考えていますか?
井筒 知り合いの子が「監督の映画(『無頼』)、観ました! グッと来ました」というから、どうやって観たのか尋ねたら、試写をスマホで観たというんだよな。あの小さな画面でどれだけ伝わるんだろうかと思うよな。今回の『無頼』はフィルム撮影。昭和を生きた男たちの顔をしっかりスクリーンに映し出そうと思ってね。スマホでもテレビ画面でも、マツの後ろにいる若い衆の表情とかは分からないよ。『仁義なき戦い』もNetflixで配信されているから、台詞を確認したいときとかに見直すけど、昔スクリーンで観たような衝撃はパソコンの画面からは感じられない。デジタルだとフィルムのような色味も出ないし、空気感も伝わらない。
松本 LIVE×ONLINEという配信ライブをやっているので、ファンの皆さんはスマホなどで楽しんでいます。コロナ禍の今はリモートで楽しんでもらえればいいんですが、コロナが収まったらライブをぜひ一度体験してほしいですね。生で観る熱いステージの方が絶対に迫力ありますから。
井筒 そのとおり。ステージは生で観るのが一番。映画は劇場で観るのが一番。実際にリアルに触れてみないと、伝わらないものがあるということだよ。
(取材・文=長野辰次 撮影=尾藤能暢)
映画『無頼』
12月12日(土)より、新宿K’s cinema、池袋シネマ・ロサ 他、全国順次ロードショー
監督/井筒和幸
脚本/佐野宣志、都築直飛、井筒和幸
主題歌/泉谷しげる「春夏秋冬~無頼バージョン」
出演/松本利夫(EXILE)、柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、升毅、木下ほうか
配給/チッチオフィルム
配給協力/ラビットハウス
2020年/日本/146分/カラー作品/ビスタサイズ/5.1ch/R15+
(c)2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム
映画『無頼』公式サイト www.buraimovie.jp
映画『無頼』公式twitter @buraimovie2020
YouTube「井筒和幸の監督チャンネル」
●井筒和幸(いづつ・かずゆき)
1952年奈良県生まれ。1975年に自主映画『行く行くマイトガイ 性春の悶々』で監督デビュー後、島田紳介や松本竜助らが出演した『ガキ帝国』(81年)で注目を集める。ディレクターズカンパニーで制作した『東方見聞録』は劇場未公開となったが、ナインティナイン主演作『岸和田少年愚連隊』(96年)は高く評価され、『のど自慢』(99年)、『パッチギ!』(04年)などをヒットさせた。その後も、実在の殺人事件を題材にした『ヒーローショー』(10年)や『黄金を抱いて翔べ』(12年)と話題作を撮り続けている。
●松本利夫(まつもと・としお)
1975年神奈川県生まれ。高校1年生のときに『ダンス甲子園』『DADA L.M.D』などのテレビ番組を見て、ダンスを始める。2001年にEXILEのパフォーマーとしてデビュー。2007年から劇団EXILEの公演に役者として出演。2015年に劇団EXILE松組を立ち上げ、同年EXILEパフォーマーを卒業。主な映画出演に『LONG CARAVAN』(09年)、『謝罪の王様』『晴れのち晴れ、ときどき晴れ』(2013年)など。
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