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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【15】

山下智久出演映画の主演はスターコメディアン! ケビン・ハートが嘆く!?アメリカの“有名税”

山下智久出演映画の主演はスターコメディアン! ケビン・ハートも嘆くアメリカの有名税を!?の画像1
写真/GettyImagesより

 先日、ケビン・ハートの6作目となるスタンダップコメディ・スペシャルがNetflixから配信された。

 ケビン・ハートはスタンダップコメディアンとしてキャリアをスタートさせ、これまでグラミー賞の最優秀コメディアルバム部門へのノミネートやエミー賞受賞など華々しい活躍を見せ、近年俳優としても自身の主演映画がヒットし世界的なスターへと上り詰めた41歳。

 インスタグラムのフォロワーは1億人を超え、最近では、主演映画にハリウッド進出を表明した山下智久が出演することで日本でも話題を集めたばかりだ。そんな彼が満を辞して、自身の原点でもあるスタンダップコメディの“舞台”に帰ってきた。

 “舞台”といっても、“Zero Fucks Given”(邦題は『もう知らねえ』)と題された本作は、ケビン・ハートのロサンゼルスの自宅リビングで行われたライブ公演である。アメリカ国内でコロナウィルスの感染が若干の落ち着きを見せた9月、マスクをした観客たちがソーシャルディスタンスを守った上でリビングに並べられたソファーに腰掛け、ケビンも暖炉の前でシルクのパジャマ姿のままマイクを握った。

 その家が超のつく豪邸であることは一目瞭然で、彼のこれまでの成功を想像するに難くない。そして廊下には彼のヒーローであるリチャード・プライヤーやエディ・マーフィーといったレジェンド・コメディアンたちの写真が、所狭しと飾られている。

 これまで5万人収容のスタジアムやアリーナで公演を成功させてきたケビンにとってわずか30人余りの観客はもの寂しくも見えるが、「リラックスできる」快適な環境だと語る。

 そして「ここは俺の家なんだから、言いたいことが言えるし、今日ここで言ったことは訂正だってしないからな」と続ける。

 その背景には2年前の騒動がある。

 2018年、オスカーの司会に内定していたケビンは、10年以上前の同性愛者を揶揄する2行のツイートを掘り起こされ、それらはインターネットを中心に大きなボイコット運動に発展した。そしてついに“夢だった”オスカーの司会を辞退せざるを得なくなり、オスカーではそれ以来、司会不在のまま式典が催されるという異常事態となっている。

 本作でも、攻めたジョークを言うたびに「きっと俺はこの後、プラカードを掲げた奴らに”ケビン・ハートをキャンセルしろ“って言われてボイコットされるんだろうな」と度々自虐とも取れるフォローを入れ、その一件を知っている観客からは笑いが起きる。

 忖度しないことを明言するケビンだが、以前と比べると、その”トゲ“や”毒“がそぎ落とされ、配慮のある(炎上を避けることを意図したかのような)姿に「アップデート」されていることは明らかで、家族ネタを中心に据えた構成からは”丸くなった“という印象を受ける。

 しかし、毒を失った代わりに円熟味を増したケビンは、自身の子どもたちをネタにしながらもアメリカが抱える貧困と公教育の崩壊に言及する。

 現在アメリカの多くの学校で経済格差に伴う学力の差が顕著になっている。もともと富裕層の多く住むエリアは学区内の公立学校の高い教育水準により、地域へのさらなる富裕層の流入を呼び、不動産価格が上昇し続けているのに対し、低所得者の多い学区では荒廃が顕在化し、学力のレベルにも大きな差が生じてしまっているケースが多く見られる。

 その是正のために学区をシャッフルする目的でスクールバスによる通学という措置が取られては来たものの根本的な解決には至っていない。

 州によって状況は異なるが、たとえばカリフォルニア州では、貧困層の多い学区の実に1割以上の生徒がホームレス状態となり、そのうちの7割が国語の基礎テストに合格できず、6割が高校を卒業できないという。

 ケビン自身も父親がコカイン中毒者で、母子家庭に育った出自を持ち、貧しかった幼少期の唯一の楽しみがテレビのスタンダップコメディを観ることだった。貧しい地区の公立学校から必死に成功を夢見た彼は、世界的名声を得た今、自身の子息を私立学校に通わせていると語る。

 しかし「私立は過保護すぎて”腑抜け野郎“を量産してる」と言い放ち「奴らは”本当の現実“に目を向けさせようとはしないんだ」と断じる。

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