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【緊急】Kis-My-Ft2「おっぱいドラマ」をめぐる議論 メディア文化論教授が語る“傷ついたファン”とジャニーズ事務所への提言

アイドルはグローバルな視点から批評される時代になった

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2019年に亡くなったジャニー喜多川の夢もまた「世界進出」だった。今後はよりグローバルな視点でアイドルをクリエイティブしていくことが求められるだろう。(Getty Imagesより)

──インターネットの発展によって、ジャニーズは井の中の蛙でいられなくなりました。ファンはジャニーズとK-POPや海外セレブなどのパフォーマンスや発言を同時に追い、相対的に比較することができるようになったので、例え国内市場がまだジャニーズ優位だったとしても、この調子では目減りしていくのではないかという危惧があります。

田中 そうですね。現代のアイドル文化、そしてアイドル市場はすでにグローバルに展開されています。あらゆるコンテンツが日本以外の地域でも受容され、グローバルな視点から批判されるようになりつつあることは、コンテンツ制作者たちがもっと真剣に考える必要があると思います。

 また、インターネットをどう捉えるかということも今回の問題に関係している。配信動画は地上波じゃないから規制が違います。スポンサーのCMが付いている訳ではないので、従来の規制の外にあるものだともいえる。だからこそ「テレビではできないことをやろう」「攻めたことをやろう」という発想になるのは理解できます。でも本当にラッキースケベが「攻めた表現」なのだろうかと。

──今回の作品の原案を務めたキスマイの北山さんと私、同い年なんです。我々世代は散々そういうものを浴びて育ってきたんですね。『モテキ』とか『童貞。をプロデュース』とか、ああいう童貞カルチャーなるものがえらい持て囃されていた時代を通っている。だから、表現云々の前に「童貞が“モテ”のために右往左往する」ってストーリーが「めっちゃ古い~~!」ってなりました(苦笑)。それ今ネットでやって面白くなるのか? っていう。同世代だから感じる恥ずかしさもありましたね。

田中 インターネット配信で番組を制作することを同人誌のように捉えているんでしょうかね。今この題材で「攻めたね」と評価されるには相当内容を練らないと難しそうです。単なる「ラッキースケベ」ってもう旧世代のテレビ的な表現なんですよね。志村けんの『バカ殿』とか『オレたちひょうきん族』とか、あの時代のテレビが作った「お色気コント」なるもので、新しくもなんともない。

──そうなんですよ。これを「攻めた」って捉えるのは、ちょっとなんかズレている気がする。

田中 動画配信という方法を、「テレビでは扱えなくなったまずい表現の掃き溜め」にするのか、それとも「新しい表現の可能性を開くための手段」にするのか、作り手に問われる部分だと思います。ジャニーズは最近になって動画配信に進出したと聞いていますが、古い世代のテレビマンに感覚が引きずられているのかもしれないですね。

──暗い結論になってしまいました……。

田中 重ねるようで恐縮ですが、最後に大学で教えている者として声を大にして言いたいのは、ドラマの舞台が大学なんですけど、大学の教員側からしたら「大学来たら勉強しろや」と(笑)。いまどきの大学生はもっとマジメだし、そこの表現もすごく無礼だなと感じました。今は就職も厳しい、授業料も高いし、みんな必死。お気楽な大学生がいないわけじゃないけど、メインストリームじゃないです。大学のイメージもなんかバブル時代っぽいんですよね。

──全体的に古臭いっていうのは言えそうですね。「クラシック」じゃなくて「古臭い」。個人的に、ジャニーズって歌舞伎みたいだなと思うんです。アイドルたちが先輩の表現の「型」を継承していく部分があるので。でも、どんな伝統芸能も「新しい風を入れないと衰退する」というのはよく言われる話です。今回の問題はジャニーズにとって新しい風を入れる「換気のチャンス」にすることもできると思う。拗ねたり腹を立てたりせず、時代の流れをきちんと見直してほしいと切に願います。

田中 東子(たなか・とうこ)
1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学後、博士(政治学)を取得。現在は大妻女子大学文学部教授。専門はメディア文化論、カルチュラル・スタディーズ、フェミニズム。著書に『メディア文化とジェンダーの政治学』(世界思想社)など。

最終更新:2020/12/10 13:01
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