『鬼滅の刃』炭治郎は「承認欲求時代」のニューヒーローか──アドラー『嫌われる勇気』の共通点
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炭治郎が実践するアドラー的「課題の分離」
ほかにも、
「殺された人たちの無念を晴らすため
これ以上被害者を出さないため…
勿論俺は容赦なく鬼の頸に刃を振るいます
だけど鬼であることに苦しみ
自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない」
(単行本5巻/竈門炭治郎のセリフより)
と語っている通り、炭治郎は鬼の苦しみに理解は示しつつも、目的を達成するために“容赦なく鬼の頸に刃を振るう”と宣言しており、アドラーが提唱する「課題の分離」(相手がネガティブな感情を抱いているときに、それを自分が抱え込もうとしてはいけない、というもの)も実践している。
「これまでの物語は、例えば昨年大ヒットした映画『ジョーカー』のように、どちらかというとフロイト的な“トラウマ語り”しているものが多く、そのほうが“理解しやすかった”。でも、承認欲求に溢れて、それに疲れてしまっている現代においては、目的がはっきりしていて承認欲求がない──ブレずに、濁りのない炭治郎のようなキャラクターに、ある種の“憧れ”を抱く人が多いのではないでしょうか」
自分探しもせず、承認欲求もない主人公がこれだけの人気を集めるということは、逆説的に「承認欲求」に囚われている人がいかに多いかということの証左のようだ。これほどまでに「自己啓発本」的な『鬼滅の刃』、“令和版アドラー”として読んでみるのも一興だろう。
※この記事は2020年5月7日に掲載されたものの再掲です
【後編】に続く
●大室正志(おおむろ・まさし)
1978年、山梨県生まれ。大室産業医事務所代表。産業医科大学医学部医学科卒業。都内の研修病院勤務、産業医科大学産業医実務研修センターを経てジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業医室を経験し、現職。専門は産業医学実務。メンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、生活習慣病対策など企業における健康リスク軽減にも従事する。現在日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社の産業医を担当。
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