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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.612

フィンランド発、純愛系SM映画『ブレスレス』 亡き妻の面影を女王さまに求めるダメ男の危うさ

依存性が強い愛は、人を廃人にもしてしまう

外科医のユハ(ペッカ・ストラング)は、SMプレイにハマり、体がボロボロになっていく。

 SMをテーマにした韓国映画に『LIES 嘘』(01)がある。田舎育ちの女子高生・Yは、美術界で注目を集める現代彫刻家・Jの自宅に電話を掛け、落ち合った町の安いビジネスホテルで処女を捧げる。自分の好きな男性を相手に初体験できたことをYは喜び、Jが求めるままにアナルプレイやスパンキングも許すようになる。愛する男から責められることが、Yには堪らない快感だった。

 Yは高校を卒業し、女として洗練されていく。同一人物と思えないほど、Yは美しくなっていく。だが、次第にYとJとの間にはスキマ風が吹くようになる。かつてはサディスティックなプレイを大いに楽しんでいたYとJだったが、いつしかそれは苦痛でしかないようになっていた。愛情が消え、信頼関係もないSMプレイは、もはやただの暴力でしかなかった。愛が痛みに変わってしまう瞬間が、とてもせつない。

 愛は麻薬だ。心が弱っている人には愛は強壮剤となり、痛みをやわらげる鎮痛剤にもなる。だが、愛は依存性も強く、依存者はより多くの愛を求めるようになってしまう。愛は危険だ。身体にストレートに訴えかける倒錯的純愛を描いた『ブレスレス』は、充分に気をつけて観たほうがいい。

 

『ブレスレス』
監督・脚本/ユッカペッカ・ヴァルケアパー 脚本/ユハナ・ルンメ
出演/ペッカ・ストラング、クリスタ・コソネン、イロナ・フッタ、ヤニ・ヴォラネン、オーナ・アイロラ、イーリス・アンッティラ、エステル・ガイスレロヴァー
配給/ミッドシップ  R15+ 12月11日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー  (c)Helsink-films Oy 2019
https://breath-less.com

最終更新:2020/12/04 15:00
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