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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.612

フィンランド発、純愛系SM映画『ブレスレス』 亡き妻の面影を女王さまに求めるダメ男の危うさ

心の闇を抱える下僕に応じる女王さま

素顔のモナ(クリスタ・コソネン)。ムチ打ち、乳首いじめ、排尿など客の注文に応えてくれる。

 

 飼い犬として厳しく調教されていくユハが、女王さまであるモナにおねだりする拘束プレイは、極めて危険だ。プロのS嬢であるモナは、ギリギリのところで手をゆるめる。仮死状態寸前のところで、息を吹き返すユハ。モナが行う拘束プレイは、素人は決して手を出すべきではない。ひとりで真似すると、確実に死が訪れる。三途の川に足を踏み入れたまま、帰ってこられなくなるだろう。

 モナとの調教&拘束プレイに目覚めたユハは、喜びを反芻するのと同時にそれまでの日常生活はすさんでいくことになる。以前から予定されていた手術が控えているにもかかわらず、ユハは病院を早退してモナのいるSMクラブへ行こうとする。娘のエリが通う学校の音楽発表会があることも忘れ、亡き妻との逢瀬に溺れる。連日にわたってモナ女王さまにお仕置きされ、ユハの体はボロボロだった。でも、体が傷ついていくのとは逆に、ユハの心は喜びに満たされていた。退廃的な生活を、超ポジティブに楽しむという倒錯的なユハの日々が描かれていく。

 亡き妻に会うためにユハがSMクラブに通っていることを、女王さまであるモナは知らない。だが、ユハが癒しがたい深い心の闇を抱えていることは分かる。それは、モナ自身も闇を抱えているからだ。モナは普段は整体師として働いている。体の不自由な人たちのために甲斐甲斐しく働く、もうひとりの地味なモナ。昼は整体師、夜はSMの女王さまとして、多くの悩める人たちを救済している。しかし、彼女は根っからのハードなサディストという顔を持ち、彼女自身の深い欲望を満たしてくれる相手はそうそうはいなかった。

 誰にも悩みを打ち明けることができない孤高の女王さまの前に現れたのが、忠実な飼い犬となるユハだった。モナにとっても、ユハとの出会いは運命的だったのだ。磁石のS極とN極が引かれ合うように、真性のS嬢であるモナと忠実なるM男のユハは、互いに強く引かれ合うことになる。

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