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日刊サイゾー トップ > 社会  > 新型コロナワクチン日本実用化に大きな課題

新型コロナワクチン「ファイザー」と「モデルナ」競争も日本実用化に大きな課題

輸入がOKできても輸送はどうする?

 こうした課題を解決し、“いざ輸入”となった時に待ち構えるのが、“保存方法”という最大の問題点が待ち構えている。

 まず、ワクチンなどの輸入には“非常に煩雑”な手続きが伴うのだが、これらの手続きについては、新型コロナウイルスのワクチンについては特例的に簡素化したとしても、輸入したワクチンの保管には、「生物学的製剤区分の製造業許可」という特殊な許可が必要となる。

 何千万人分という新型コロナウイルスのワクチンを輸入保存するためには、この許可を得た保存施設が相当数必要となるわけだが、この施設をどのように確保するのか。さらに、問題なのは両社のワクチンが相当低温での温度管理が必要になるという点だ。

「ファイザー」と「モデルナ」のワクチン製造に使われる「mRNA」は、輸送や保管の際に低温での管理が重要になる。ファイザーのワクチンはマイナス60~80度なら最大半年間の保存が可能で、モデルナのワクチンもマイナス20度なら最大半年間の保存が可能とされている。

 これだけ低温での保存手段を確保した上で、輸入されたワクチンを保存する施設が必要になる。ファイザーはワクチンの輸送に使う専用の小型容器を開発しており、ドライアイスを入れることで輸送の際や、冷凍庫がない場所での温度管理が容易になるような対応を進めているが、国を跨いでの輸入で実効性が確保できるのかが焦点となろう。適切な温度管理ができなければ、ワクチンを接種しても効果が失われる可能性がある。

 無事に国内に輸入したとしても、「ワクチンを一般の医療機関で、これだけ低温で保存する設備を持っているところは、ほとんどない」(内科医)というように、実際にワクチン接種を行う段になっての課題が残る。

 一般の医療機関が生ワクチンなどを保管するのは2~8度で、この温度では両社のワクチンはファイザーで5日、モデルナで30日しか保存が効かない。国内に輸入されたワクチンの接種を行う医療機関に輸送し、接種を行うまでの温度管理は課題となる。

 ワクチンの厳格な温度管理を行える医療機関となれば、限られた医療機関となる可能性が高く、こうした医療機関ではワクチン接種のための方法(接種を受けられる優先順位など)を検討しておく必要がありそうだ。

 ワクチン接種を加速化しようと思えば、海外で開発された新型コロナウイルスのワクチンを国内で製造する方法もあるが、この場合には外国製造業認定という厳しい審査に基づいた認定が必要となる。製造所の設備を含め、製造体制を整えるのは容易ではないだろう。

 新型コロナウイルスのワクチン実用化が間近に迫っていることで、“浮かれ気分”に浸るのはまだ早い。国内でのワクチン接種には乗り越えなければならない課題は多い。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

鷲尾香一の ”WHAT‘S WHAT”

わしおこういち

最終更新:2020/12/03 18:53
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