戦後、変化する女性の意識を描いた小津安二郎『麦秋』の生命力! 「今まで男が図々しすぎたのよ」
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ドラマ『チャンネルはそのまま!』(HTB)や「SOMPOケア」のCMなどに出演し大注目の女優、宮下かな子さんが、昭和のキネマを見て女優道を勉強していく新連載がスタート!第1回は、ちょうど今の時代・季節にぴったりな、名匠・小津安二郎の映画をピックアップする。
皆さま、こんにちは!宮下かな子と申します。今回サイゾーさんのもとで、映画紹介の連載を始めることとなりました。
夢だった連載…大好きなイラストと文章をお仕事にできるだなんて……!なんと幸せなことか……!
喜びを隠しきれず、マネージャーさんと「原稿の〆切は~」といった普段しないやりとりに、にやにやと笑みを浮かべております。まだまだ未熟者ですが、私独自の視点で、映画の魅力をたっぷりお伝えできるよう努めますので、楽しんで読んでいただけましたら嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
さて!記念すべき第一回目は、小津安二郎監督『麦秋』(1951年松竹)をご紹介!
〈あらすじ〉
主人公、間宮家の長女紀子は、父母、伯父、兄夫婦とその息子たち、という大家族に囲まれて暮らしている。28歳独身、会社員として働く紀子のもとに、ある日縁談の話が舞いこんできて……。
今回、連載で映画を紹介していくにあたって、『キネマ旬報ベストテン』のランキングからピックアップすることとなりました。1924年から外国映画を対象にスタートし、その2年後からは日本映画も対象となった由緒あるこの映画アワードには、大好きな作品や俳優さんが数多く名を連ねているので、選ぶのになかなか苦労しました。
そんな時、参拝に伺った神社で偶然蓮の花を見かけまして。ふと4年程前に読んだ、小津安二郎監督の一節を思い出したのです。
〈泥中の蓮……この泥も現実だ、そして蓮もやはり現実なんです、そして泥は汚いけれど蓮は美しい、だけどこの蓮もやはり根は泥中に在る……私はこの場合、泥土と蓮の根を描いて蓮を表わす方法もあると思います、しかし逆にいって蓮を描いて泥土と根をしらせる方法もあると思うんです。
戦後の世相はそりゃ不浄だ、ゴタゴタしている、汚い、こんなものは私は嫌いで、だけどそれも現実だ、それと共につつましく、美しく、そして潔らかに咲いている生命あるんです〉
~「僕はトウフ屋だからトウフしか作らない」より~
水面では美しい花を咲かせ、その水の下では泥中に根を生やす蓮を、私たちの生きている現実に例え、それを映画に描きたいと語っている小津監督の言葉でした。
世界で大きな変化が起き、とても困難な状況の今。エンターテインメント界も大きな打撃を受けています。それでもエンターテインメントは、常に人々の希望でありたい。この一節から、今観るべき作品は小津作品だと言われているような気がして、その中でも、私が最も繰り返し観ている『麦秋』を選びました。
この作品もお馴染みの小津映画常連メンバーが並んでいますが、主人公紀子を演じる原節子さんの凛々しさたるや!
小津監督は、スクリーンに映る小物の配置や、役者の動きまで全てをご自身で決め、何度もテイクを重ねて撮影することで有名です。不器用な私がその現場にいたらと思うと、想像しただけでゾッとしてしまうのですが、そうした制約の中で唯一、原さんだけがとても解放的にそこに存在しているように感じるのです。
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