六代目山口組と神戸山口組の分裂問題に年内決着はあるのか? 尼崎での銃撃事件が持つ意味
#六代目山口組 #神戸山口組
山口組分裂問題は、昨年10月に六代目山口組の髙山清司若頭が出所して以降、同組の優勢がさらに強まり、いよいよ佳境へと突入したかと思われていた。事実、業界関係者の間では、年内決着もあるのではないかと囁かれ、六代目山口組サイドはすでに年末の行事である納会の準備を進めているとの噂が流れていたほどだ。
さらに、六代目山口組サイドでは、神戸山口組の中枢組織である二代目宅見組に対する組員の引き抜きを中断していたのだが、それを再開させたようだという声も上がっていた。そして、11月に入って起きた、神戸山口組幹部である三代目古川組組長への発砲事件。これで一気に抗争は終結へと向かうかと見られていたのだが、11月18日には、それに対する報復ではないかと見られる発砲事件が、同じ尼崎市内で起きたのだ。狙われたのは、六代目山口組司興業傘下の琉真会会長宅。3発の銃弾が打ち込まれ、窓ガラスなどを破壊したという。
「ガラス割りなんかではなく、相手の身体に銃弾を入れなければ、返し(報復)として意味がないという見方もあるだろう。ただ今回の銃撃が神戸山口組側の犯行ならば、『神戸はまだ解散はしない』という意思の表れにとれなくもない。つまり解散しない以上は、今後も六代目山口組が神戸山口組に対して、攻撃を加え続ける可能性があるということだ。そうなると、分裂問題の解決までには、まだ時間を要するのではないか」(業界関係者)
それは、すなわちヤクザに対する法の締め付けが、さらに厳しくなるのではないかと関係者は指摘している。
「六代目山口組サイドは、神戸山口組がどんなに弱小化しようとも、自らと平行して存続させることを認めていないといわれています。つまり特定抗争指定暴力団の指定を受けている中、さらに取り締まりが強化されようが、武力を行使してでも神戸山口組を壊滅させるという考え方です。一方で、主力の五代目山健組が離脱し、ますます劣勢が囁かれる神戸山口組も存続を賭けた闘いになるわけです」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
また、分裂問題が長引けば、それは必然的に両組織の経済活動、すなわちシノギにも影響を及ぼすことになりかねない。特定抗争指定下にいる現在、警戒区域内では、組員が集まれないほか、組事務所の使用禁止などの厳しい制限を受けているのだ。
「現役組員として登録された人物がなにかすれば、すぐに検挙対象になってしまう。例えば、自分名義では契約できないということで、カタギの知人に頼んで携帯電話を契約してもアウト、物件を借りてもアウト。そのため現在は、反社会的勢力として当局に登録されていない、いわゆる半グレを繁華街で活動させて、そこの後ろ盾になって、組員へと資金が流れるシステムが構築されつつある。一見、繁華街からヤクザが消えた光景に映るかもしれないが、実際は姿を隠して経済活動を続けている。ただ、表だって組員らが繁華街を闊歩しない分、若い半グレグループが幅を利かせているため、逆に治安の低下が生じるという側面も出てきている」(組関係者)
ヤクザを頂点にした裏社会のパワーバランスはあくまで変わっていないが、ヤクザがその存在を消しているために、繁華街などでの治安に影響が出ていると、この関係者は指摘している。
異例!? 神戸山口組系組長に無罪判決
そうした分裂問題とは別に、これだけヤクザに対する厳罰化が進む中で、稀にみる判決が言い渡されたのだ。
11月18日の東京地裁で、脅迫などの疑いで起訴されていた神戸山口組の二次団体である二代目英組の藤田恭道組長に無罪が言い渡されたのだ。
「起訴されれば、99%以上の確率で有罪となるのが日本の裁判制度です。それだけ当局による捜査、立証能力が高いということです。それがヤクザの組長に対して、一審判決で有罪判決を受けていたにもかかわらず、二審の高裁判決で無罪が言い渡したされた。無罪となるための新たな新証拠がでてきたわけでもなく、一審での実刑判決としての証拠の解釈が180度変わったんです。検察側は今後この判決を不服として最高裁へと上告することも十分に考えられますが、そもそも今回の逮捕・起訴自体がかなり無理筋だったのかもしれませんね。逆にいえば、それぐらいの無理筋の逮捕が、ヤクザに対しては横行しているともいえるかもしれません」(犯罪事情に詳しい専門家)
2020年も残り1カ月になろうとしている。分裂問題に今後、大きな進展は見られるのだろうか。
発砲事件が相次いだ兵庫県尼崎市内には11月19日、事態を重くみた兵庫県警が、主に繁華街でのみかじめ料の対策などにあたる屈強な特別暴力団対策隊を派遣し、抗争の激化に対して警戒を強めているという。
(文=山口組問題特別取材班)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事