「070の意味わかるやろ?」関西ラップ“DIRTY KANSAI”の若頭Young Cocoが歌う黒い仕事とポジティブな愛
#音楽 #ヒップホップ #DIRTY KANSAI #Jin Dogg #Young Coco
オートチューンのスタイルはかなりヘイトされた
――Cocoさんは〈HIBRID〉からリリースした当初と現在で、かなりスタイルが違いますよね。
YC うん。最初は僕も、Jakeみたくシャウト系のトラップにハマっていたんです。しかも、その頃はトラップでモッシュする、俺らのDIRTY KANSAIスタイルが確立されつつあった。だから最初はそれでよかったんだけど、すぐに「同じクルーに2人もシャウト系はいらんやろ」って思うようになって(笑)。で、自分は自分なりに模索して、歌ったり、確実なラップを落とし込むような現在のスタイルにたどり着きました。結果的には変えてよかったと思う。きっと、俺がジェイクと同じスタイルで続けていたら、金魚のフンみたいな感じに見えただろうし。今の〈HIBRID〉はそれぞれが違う個性の音楽をやっているから、すごくバランスがいい。
――Cocoさんといえば、日本では早い時期からオートチューンを使っていたラッパーとして知られます。
YC 最初はこういうスタイルでやっている人が全然いなかったから、かなりヘイトされましたよ。YouTubeの批判コメントも全部見てます(笑)。で、一回食らう。それをポジティブなエネルギーに変えて制作していました。みんな、オートチューンを使えば誰でもああいう仕上がりになると思っているけど、実はそんなことなくて。シャープで濁りなく響かせるために、メロディの作り方や歌い方をかなり工夫してます。そういうのがなかなかわかってもらえなくて悔しかったけど、みんながだんだん認めてくれるようになった。
――ただ、前作『ALTERED』(19年)と比べると、今作『NOT REGULAR』はかなりダークな雰囲気ですね。
YC 特に意識していないんですけどね。俺、毎日曲作っているから、何百曲もストックがあって。今回のアルバムは、その中から一番いいと思った8曲、デラックス版は15曲を選びました。だから、アルバムとしては明確なテーマは設定していなくて、俺のライフスタイルがそのまま曲になっているんですよ。
――デラックス版の1曲目「090!!!」で「黒い仕事」についてラップしたのは、なぜですか?
YC さっきも言った通り、自分自身は足を洗いました。その後は番号が090や080で始まる自分名義のケータイを使ってきたけど、フッド(地元)にはいまだにそういう仕事をしいてる友達もいて、070で始まるトバシのケータイを使っている。そういうことを知っていると聴いていてギクッとすると思うし、こっちも「俺は違うけど、この意味わかるやろ?」みたいな。俺は自分の目で見たことしかラップしない。USのクルーもそうだと思うんです。英語は全然わかんないけど、曲を聴いているとフロントマンのラッパーの後ろにフッドが見える。みんなが一緒に上がっていこうとしているのがわかって、感動できる。俺もそういう曲を作りたくて。
<090!!!>
・Spotify
・apple
――なるほど。
YC 今回のアルバムは、ほとんどコロナの自粛期間にレック(レコーディング)したんです。タイトルは最初、『I’m Not Regular』にしようとしていたんですけど、Jakeが「『NOT REGULAR』にすれば、普通じゃない今の状況にもかかる」ってアドバイスしてくれて。俺自身は普段からずっとスタジオにいたんで、特にライフスタイルの変化はなかったんだけど、周りの人たちがかなりキツそうだったから、ポジティブというキーワードはかなり意識していましたね。「Everything!!!」とかもそうだけど、聴いてる2~3分の間だけでもコロナのムードを忘れられるというか。今はフレックス(ラグジュアリーなさまなどを見せびらかすこと)する時期じゃなくて、愛を伝えたかった。
<Everything!!!>
・Spotify
・apple
――ずっといたスタジオというのは〈HIBRID〉のスタジオですか?
YC はい。寝泊まりして、洗濯もして(笑)。朝起きて、気持ち作って、制作する、みたいな。もちろん、うまくできない日もあるけど、できない日にはできないなりの音楽があって。俺は当たって砕けろスタイルで毎日作ってますね。
――曲作りはどのように進めていくんですか?
YC 実は、今はフリースタイルで作っているんですよ。『ALTERED』の頃までは歌詞を書きまくっていたんですけどね。考えて書くと言葉は鋭くなっていくんですけど、いろんな意味で固まりがちになるというか、柔軟に対応できないことに気づいて。ここ1~2年かな。最近は自分でトラックも作っているので、いいなと思ったらレックボタンを押して録り始める感じ。そうすると考えていることをそのままラップにできるし、いいキャッチーさが生まれる。メロディは声を出さないと、わかんないんですよね。想像した声と出した声が違うこともある。そうなると、カッコよさが削がれる。USのラッパーがなんでカッコいいかっていえば、ヤツらはひらめきをそのままを音源に落とし込めているからだと思うんですよ。俺はまだ完全にできてないから、毎日勉強中なんですけど。
――レコーディングも自分でやっているんですか?
YC はい。自分でトラックを作った曲に関してはマスタリングまでやっています。独学で勉強しました。本当は今回のアルバムも全部自分のトラックでやろうと思ったけど、さすがに全15曲マスタリングするのは大変すぎるし、時間もかかっちゃうから、人のトラックを買うことにしました。今のYoung Cocoをできるだけ早く聴いてもらいたかったし。俺は毎日成長しているから、すぐにこの音源に満足できなくなってしまう。だから、なるべく早く出したかった。
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